複数のICT技術を活用した非対面の業務フローの確立と RPAを活用した事務処理業務の効率化を実施
たにあい糖尿病・在宅クリニック
院長
谷合久憲
さん
たにあい糖尿病・在宅クリニック(外部サイトに移動)
たにあい糖尿病・在宅クリニックは、糖尿病を中心とした一般内科外来診療、胃カメラや大腸カメラの内視鏡検査、患者さんのご自宅に訪問する在宅医療、新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」という。)のワクチン接種・検査・治療を行っています。
コロナ患者増加等による医療の逼迫を受けて、非対面の業務フローの確立と事務処理の効率化に向けて様々なICTの導入に取り組みました。
コロナ禍におけるデジタル技術を活用した業務フローの確立
- 導入したデジタル技術について教えてください。
- 地域の医療・介護・福祉関係者のシームレスな連携を目的とした医療用SNSメディカルケアステーション、電話対応負担軽減を目的とした電話自動応答システムIver(アイバー)、コロナ患者向けのWeb問診Symview(シムビュー)、ビデオ通話システムを利用したコロナ患者のモニタリング、RPAツールBizRobo!(ビズロボ)による事務処理業務の自動化など、多くのデジタル技術を導入しています。
- デジタル技術の活用により業務効率化できたことで、コロナ関連の業務負担が増大した中でもワクチン接種やPCR検査、高齢者施設のクラスター対策を包括的に実施することができました。
- デジタル技術を導入したきっかけは何ですか。
- コロナ感染が拡大し、周りのクリニックではコロナ感染症の検査やワクチン接種の対応に追われていました。また、全国各地で基幹病院における病床の逼迫を受けて、本来治癒可能な疾患の救急搬送や外来診療が中止されている状況が散見されたため、当院でワクチン接種を実施する前に、事前の対策が必要だと思ったのがきっかけです。
コロナワクチンのカルテ入力の自動化、毎朝1時間半かかっていた作業をロボットが対応
- デジタル技術の導入に当たり、どのような課題がありましたか。
-
日本の医療業界では、個人情報保護の観点からICTの利活用に制約が多く、郵便やFAX等が未だに主流となっています。また、当院は開業2年目ということもあり、経験や資金力に大きな課題がありました。
しかし、ハイセキュリティかつローコストなデジタル技術を順番に導入し組み合わせることで、安全性を担保しながら費用対効果を高めることができました。
-
当事者がデジタル技術を理解することで、効果の見込める活用方法を実現
- デジタル技術の導入に当たって工夫された点は何ですか。
-
全てをデジタル技術で解決するのではなく、従来の業務体制とデジタル技術をハイブリッドに組み合わせるなどポイントを絞って導入したことです。また、コロナ禍にデジタル技術を駆使することで、非対面・非接触の運営体制、業務の効率化、収益増加など効果を最大限に発揮することができました。
RPAによる事務処理業務の自動化については、構築はBizRobo!パートナーである株式会社Local Powerさんにお願いしましたが、運用については当院のスタッフが対応しています。業務内容の変化に合わせて、RPAの仕組みも当院で改善しながら活用することができています。
- 導入後の効果はいかがですか。
-
地域の在宅医療チームの情報共有インフラを医療用SNSで確立したことで、切れ目のない医療を患者さんに提供することができました。また、電話自動応答システムIverとWeb問診Symviewを組み合わせてワクチン接種運用の仕組みを構築し、重複接種リスクの低減、事前問診による業務効率化を図ることができ、重症化予防や基幹病院への入院低減に寄与する可能性を示すことができました。
コロナに関わる事務処理業務については、コロナワクチンのカルテ入力や点検用レセプトの印刷、電子カルテの準備など、出勤後に何時間もかけて対応していた業務がRPAによる自動化のおかげで出勤時には既に準備されている状態になりました。
スタッフからは空いた時間を他の業務に割り当てることができて、業務がとても楽になったといった声が上がっています。その他にもRPAによる事務処理の自動化など、全て組み合わせると年間で858時間の業務時間の削減を図ることができました。
- 効果を発揮できた要因はありますか。
-
基幹病院や周囲のクリニックが逼迫している状況を事前にキャッチし、先手でデジタル技術を導入し対策できたことが要因の1つだと感じております。また、デジタル技術を活用する業務については、スタッフの意見をヒアリングして課題の抽出が的確にできていたことも大きいと思います。
活用するデジタル技術については、当院で調べて選定し、運用についても当院のスタッフで管理しているツールがほとんどです。
デジタル技術を実際に使用する現場スタッフが、必要性や意図を理解したうえで導入していることも大きな効果を得ることに繋がっていると思います。
管理栄養士斎藤さん「事務の効率化が出来て楽になり、空いた時間を他の業務にまわせるようになった」と話す
新しいデジタル技術の検討、既存の技術はブラッシュアップ
- 今後はどんな展開を予定していますか。
-
新しいデジタル技術でいえば、Starlink(スターリンク)と呼ばれる人工衛星を利用したインターネット回線について、インターネット回線がない郊外圏での活用を検討しています。導入したデジタル技術をフル活用するためにどこでもインターネットが利用できる環境を作ることが重要で、Starlinkはその環境を実現できる可能性を持っています。
また、Wifiの電波を利用して人の動きを感知できるシステムなど新しいデジタル技術の実証実験に参加する予定です。こういった技術も医療業界への活用を検討していきたいと思います。
導入済みのデジタル技術に関しては、医療業界の業務環境が厚生労働省のガイドラインに従って1ヶ月程度の短いスパンで変わっていくため、事前に流れを把握しておくことで環境の変化に合わせたデジタル技術のブラッシュアップをして、経営状況の向上を図るとともに、患者さんに注力できる体制を維持していきたいと思います。
国内の医療業界は、まだICT活用の遅れがあると感じています。受診歴や薬処方箋有無などが電子データ化され、どの病院で受診した際にも閲覧できることで、品質の高い医療の提供に繋がると思います。当院のデジタル技術導入の取組によって、医療業界全体のICT活用の促進に繋がればよいと思います。
- デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。
-
デジタル技術はハイセキュリティでかつローコストな技術でもあることから、きっかけの発想があれば、誰でも導入が可能だと思います。
自分は本を読んだり、気になる専門分野のトップの方へ連絡を取って、直接お話をお伺いするなどして情報を取り入れています。そうすれば、何が課題か、どういった技術を活用できるのかなどの発想が生まれ、わからないことがあれば、インターネットで調べることで導入まで進めることができました。
国内、県内だけの目線だけではなく、様々な情報を取り入れてみてはいかがでしょうか。自社の課題を解決する技術が見えてくるかもしれません。
■RPAツール:「BizRobo!」 -
提供元のRPAテクノロジーズ株式会社にて、たにあい糖尿病・在宅クリニック様をはじめとした様々な活用事例を上記にてご紹介しています。ぜひご参照ください。
システム導入を支援した方からのメッセージ
株式会社Local Power
DX推進室 室長
棚谷 健一さん(写真 右)
昨今、医療現場では人手不足が深刻な問題となっており、2030年には全国で187万人分の人員が不足すると予測されています。そういった状況をRPAを始めとしたIT技術で改善し、医療従事者の方々の業務軽減に貢献したいという想いから、たにあい糖尿病・在宅クリニック様のご支援を行っております。
当初は数件の業務をロボット化して活用を開始していただきましたが、RPAの可能性に気が付いたスタッフさん達から「この業務はどうでしょうか?」「この作業もロボットが出来るのでは?」といったお声をいただくようになり、結果的に大きな業務効率化を実現することが出来ました。
これからもロボットを活用することでより多くの時間患者様に寄り添っていただき、我々もDXを支援することで地域医療に貢献していきたいと考えております。
(外部サイトに移動)