社内の販売や生産性等に関する情報を一元的に管理できる基幹システムを導入
紙伝票等を活用していたアナログ町工場からの変革へ
秋田協同印刷株式会社
取締役 営業本部長
杣澤 順一
さん
秋田協同印刷株式会社(外部サイトに移動)
秋田協同印刷株式会社は、1912年に「はかりや印刷所」として創業し、1941年に5社が合併し設立されました。企画・デザインから印刷・製本事業に加え、近年は電子書籍、ホームページ作成、SNS情報発信業務、グーグルストリートビュー撮影・編集、ドローン空撮の動画・写真の編集等も手がけています。
紙伝票作成等のアナログ業務からの脱却や製品情報のデータ管理による生産性向上と売上拡大を目的とした基幹システム導入までの道のりを伺いました。
基幹システムによる生産現場の効率化と進捗の可視化
- 導入したデジタル技術について教えてください。
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弊社では、生産性向上と売上拡大を目的に基幹システム「PrintSapiens」の導入を行いました。このシステムは、売上管理、工程管理、原価管理、受注管理、在庫管理など、これまでアナログで行っていた業務をデータで一括管理できる機能を備えています。
以前は、営業部門で受注した製品情報を手書きの紙伝票で管理し、生産部門に指示を行っていましたが、システム導入後は、受注情報を入力することで、生産指示が可能となりました。
また、生産現場では、作業開始と作業終了時間などのステータスをシステムに入力することで、生産進捗状況や各機械の負荷状況を可視化できるようになっています。
導入したデジタル技術により、業務の効率化と受注状況の見える化が進んだことから、迅速かつ正確な意思決定が可能となり、組織全体の生産性向上と売上拡大に寄与しています。
- デジタル技術を導入したきっかけは何ですか。
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各部門ごとに作業を管理し、業務を行っていたため、部門間の連携に課題を抱えていました。また、手書き伝票作成などに費やす時間の占める割合が大きかったため、業務の効率化にも課題があり、業績の伸展に限界を感じていました。そこで、「生産性向上」、「競争力強化」、「社内の意識変革」を目指し始めたことが、デジタル技術導入のきっかけです。
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- 以前の体制では、具体的にどのような課題がありましたか。
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過去の弊社の体制では、各部門が市販ソフトや独自のシステムを活用して、製品の受注管理や工程管理、売上管理などを個別に行っていました。また、個人ごとに作業を管理している社員もいたため、各部門のリーダーにとってマネジメントが難しく、他部門との情報交換が困難な状態にありました。
製品受注時には、営業部門で作成した紙伝票を生産部門の各工程へ回し、各部門の管理システムに情報を手動で入力していました。特に繁忙月には、2000件弱の製品を作成・製造する必要があり、手書きによる紙伝票作成に多くの時間を要していました。情報の二重入力などのミス、手書き伝票の作成の手間などにより、リアルタイムな進捗管理が困難な状況でした。
売上管理についても、担当ごとにエクセルを使用して個別に管理していました。このため、収益の実績は月末の締めまで把握できず、月締め作業にも時間がかかっていました。その結果、月締め時には営業部門や総務部門などが遅くまで会社に残り、締めの作業を行う必要がありました。
- 導入に当たり、何か課題はありましたか。
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デジタル技術に知見がなく、どのメーカーのどのシステムを導入すれば良いのか全くわからず、業務改善をスムーズに進められませんでした。また、導入したからといって問題が解決するわけではなく、弊社の業務に合わせたカスタマイズが必要で、最初から自分たちが望むようなシステムではありませんでした。
そのため、最初は複数のメーカーにシステムのプレゼンテーションを行っていただき、基盤となるシステムを選定しました。その後、社内で課題を検討し、基幹システムのカスタマイズを行った結果、改善の成果が出てきました。
手書き伝票の撤廃、売上情報のリアルタイム管理
- 導入後の効果はいかがですか。
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受注した案件については、仕様内容をシステムへ入力することで、営業担当者の手書き伝票を作成する手間がなくなりました。以前の紙伝票の体制では、定期的に受注する製品でも、毎回一から伝票の作成を行っていました。以前の受注内容を確認するために、前回の紙伝票を探すこともあり、1件当たり30分ほど伝票作成の時間がかかっていたと思います。ですが、基幹システム導入後は前歴のデータの検索が簡単にでき、複写して登録することが可能になったため、入力する情報量が格段に少なくなりました。今では1件当たり5分ほどで登録が可能です。
更に、登録したデータは社内で一元的に可視化されているため、紙伝票を手渡しする手間もなくなりました。
工場側の各工程では、作業開始から作業終了までの進捗状況を逐次入力することで、印刷・製本機械の負荷状況や作業時間、納期などの情報が可視化されて、最適な生産スケジュールを組み立てることが出来るようになり、生産性が格段に向上しました。
原価や売上情報も見える化が図られたため、営業部門の営業力強化にもつながっています。
売上げ状況もデータで管理され、リアルタイムで総務へ情報が届き集計の手間が軽減されました。営業部門や総務部門の月末作業が短縮され、効率的な業務運営が実現しており、今では月末に遅くまで会社に残ることがなくなりました。
- 導入にあたって工夫された点は何ですか。
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現場に近い各部門から1名ずつ社員を選出し、社内システム委員会を立ち上げ、トップダウンではなく、社内全体で課題を検討し導入を進めたことが成果に繋がっています。システムの不具合や改善点は社内システム委員会で審議し、必要ならメーカーへのカスタマイズを依頼しています。自分たちで対応可能な部分は自らカスタマイズを行い、ブラッシュアップすることで現在の効果につながっています。
また、基幹システムに登録・蓄積されている膨大なデータを見やすくするため、弊社社員が必要な情報に絞って抽出できるサポートツールを作成するなど、基幹システムを最大限活用できる仕組み作りを行っています。
導入した基幹システム「PrintSapiens」
社内一丸となった取組から得られた成果
- 今後はどのような展開を予定していますか。
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導入した基幹システムにはまだまだ不具合や改善が必要な部分があります。引き続き、社内システム委員会で審議を重ねて、より使いやすいシステムへとブラッシュアップを図っていきたいと思います。
また、今後はペーパーレス化に対応するために印刷物の付加価値を高めつつ、デジタル関連業務とともにクライアントのマーケティング支援を強化していきたいと考えています。
■デジタル関連コンテンツ業務事例
今回取材した事例以外にも、様々なデジタル技術を活用して事業拡大を図っています。その一部の業務事例をご紹介します。
鹿角市様 ドライブラインプロモーション動画 https://www.youtube.com/watch?v=55FOanKR9ik&rel=0
Chinese Cuisine 十六房様 https://goo.gl/maps/HqUdBusmpVQ2
- デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。
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基幹システムの導入と弊社社員作成のサポートツールにより、「生産性向上」と「競争力強化」を図ることが出来ました。また、弊社社員の待遇の改善にもつながっています。ただ、この効果はデジタル技術を単に導入しただけではなく、社内全体で課題を抽出し、どういったシステムを導入したら改善されるのか全社的に取組みを行って得られた効果だと思います。
新しいことに挑戦する際には、「社内の意識変革」といった面でも志向していく必要があると考えています。