AI-OCRを活用した入力作業や
検算の自動化

能代運輸株式会社 秋田港運事業所
リーダー
佐藤浩二 さん

能代運輸株式会社 秋田港運事業所
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1950年設立以来、お客様の国内外の物流ニーズにお応えして、船内沿岸荷役、通関・船舶代理店、倉庫保管・運送のトータル物流等を展開している「能代運輸株式会社」。
その中でも、輸出入に関わる書類の目視チェックや手動によるシステム入力の業務負担軽減を目的とした、デジタル化の取組について伺いました。

帳票の構造・項目を自動で認識するAI-OCRを導入

導入したデジタル技術について教えてください。

当社の港運業務を運用・管理するための海貨システムに、最新のマイクロソフト製AI-OCR(※1)のサービスを組み込むことで、通関業務でお客様から提出される書類の文字や表を認識し、読み取った内容をシステムへ自動で反映する仕組みを株式会社アキタシステムマネジメントさんに構築していただきました。

従来のAI-OCRのサービスでは、帳票の中で読み取る範囲やデータの定義(数字・日付等)を事前に学習する必要がありましたが、今回導入したマイクロソフト製AI-OCRは、事前の学習が不要且つ、帳票のデータをアップロードすることで、項目と値の関係性や表形式などの文書構造をAIが理解し抽出してくれます。船会社ごとに帳票の書き方やフォーマットはバラバラですが、それらの読み取りにも対応することができます。

※1 AI-OCRとは、画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する光学文字認識機能のことで、AIの学習機能で読取精度が高く、OCRと比べて使いやすいのが特徴

【導入したAI-OCR(Microsoft Azure AI Document Intelligence)の月間ランニングコスト】
 ・初期費用不要、従量課金制のクラウドサービス
 ・1ページ当たり約1.37円(税抜 /為替による料金変動あり。)
 ・月間処理枚数 約 1,000 枚
 ・月間ランニグコスト 約1,372円(税抜)
旧システムでの管理体制では、どのような課題がありましたか。

秋田港運事業所の主要業務は海上コンテナの取り扱い業務であり、貨物を引き取るための書類が必要で、これらの書類は印刷やコピーされた後に、必要なデータを手動でそれぞれ2つのシステムに入力していたため、二重で作業の手間がかかっていました。

その他にもインボイスの書類など、月に1000枚以上の書類をやり取りしていますが、通関業務担当者5人で、書類上の不備はないか、金額は正しく計算されているかなど、目視のチェックも行っていたため、大きな業務負担を感じていました。

デジタル技術を導入したきっかけは何ですか。
手作業による煩雑性や業務スキルへの依存といった課題に直面し、目視チェックや手入力などの業務負担の軽減、経験に頼らない業務処理体制の構築が会社全体で必要と考え、システムの導入を決断しました。会社として、コストをかけてでも業務処理の効率化を進めるといった方針もあり、迅速に導入を進めることができたと思います。

AI-OCRで読み取ったコンテナ番号や数量が、画面赤枠に自動で入力される。

導入に当たり、何か課題はありましたか。

以前から大手通関業者が使用する他社メーカーのAI-OCRを複数トライアルしていましたが、実運用レベルの効果を期待できるものは見当たらず、様々な課題がありました。特に、お客様から提出される様式のフォーマットが多様であることや通関業務で使用しているシステムへの自動入力方法の不透明さ、内製によるシステム構築後の保守の難しさがハードルとなりました。

そんな時に、システムサポートをしている株式会社アキタシステムマネジメントさんから、マイクロソフト社製AI-OCRの紹介があり、今まで抱えていた課題が解決する仕組みと、更なる効率化が見込める機能を提案していただきました。

作業時間の短縮とヒューマンエラーの軽減

導入前との違いは感じていますか。

現在では、主にコンテナ番号や数量などが記載された書類や比較的固定されたインボイスなどの書類でAI-OCRの機能を活用しています。以前、手入力していたコンテナ番号や数量は、AI-OCRに帳票を読み込ませると、自動的に海貨システムに入力されます。さらに、もう一つの外部システムへのデータ入力も、通関・配車システムから出力されたエクセルデータをアップロードすることで、自動で反映され、入力作業の効率化が図られました。特に、コンテナ本数が多い場合は、大幅な効果を実感しています。

インボイスの書類については、貨物を売買した金額が記載されており、その金額を以て税関への申告が必要になります。今までは、輸入者が書類に記載した申告金額に誤りがないのかを電卓を使って確認していましたが、現在ではAI-OCRに書類を読み込ませるだけで、金額を自動で検算してくるため、税関への申告作業が簡素化されました。

読み取れない部分はシステム上で強調表示され、手入力が必要な部分もありますが、人間とロボットのダブルチェックによりヒューマンエラーが減少し、現場の担当者も入力負担の軽減を喜んでいます。

コンテナ番号や数量記載の書類の目視チェック・転記作業の削減効果

インボイスなどの金額計算の削減効果

導入時には想定していなかった使い方やメリットがあれば教えてください。

当初は通関業務向けに導入したAI-OCRが、株式会社アキタシステムマネジメントさんの協力のもと、事務部門でも新たなシステムが構築され、倉庫内の木材管理業務において、サイズなどのデータが自動で入力されるようになるなど、手作業の負担が軽減されています。

通関業務の変革への期待

今後はどんな展開を予定していますか。

今後は、輸出業務や他の様々なフォーマットにもAI-OCRを活用し、通関業務の短縮化や負担の軽減を図ることで、専門領域もサポートできるデジタル技術として活用したいと考えています。また、他の部門や営業所でも業務内容に応じてデジタル技術を活用できるようにすることを目指しています。

また、外部システムとの連携に関しては、まだ課題が残っていて、今後検証を進めて精度を高めていきたいと考えています。そして、経験やスキルが少ない社員でもAI-OCRを使用してベテラン社員と同等のスピードで作業ができるようにすることを期待しています。

デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。

AI-OCRの導入には、多様なフォーマットの読み込みやシステムに判断をどこまで委ねるかなどの様々な課題があり、「なかなか導入に踏み込めない」と言う声を聞きます。

当社も全ての問題を解決したわけではありませんが、更にAI-OCRを活用することでこれまで以上の業務効率化が見込まれます。AI-OCRの技術は通関業務だけでなく、医療現場など様々な分野でも利用されており、技術革新と品質向上が期待されます。

最終的な判断はまだまだ人間が行う必要がありますが、AI-OCRの導入によって日々の煩雑な業務を効率化できる可能性が見込めるのであれば、株式会社アキタシステムマネジメントさんが提案するAI-OCRのトライアルからでも始めてみてはいかがでしょうか。

システム導入を支援した方からのメッセージ

佐藤浩二

株式会社アキタシステムマネジメント
システム部システム1課 係長
稲垣 裕也さん

今回の読み取り対象の帳票は、船会社や国によって多種多様なフォーマットがありました。OCRメーカー数社に読み取りテストを依頼しましたが断られてしまい、通常のOCRでは対応できず、読み取り対象の変化に強いAI-OCRを選定しました。
AI-OCRを使用するにあたって、フォーマットごとに読み取り項目を学習させてモデルを構築する必要があり、当初は多種多様なフォーマットがあるという点で、学習させるためのコストが大きくなってしまうことが懸念されました。
そこであらかじめ、学習済みの汎用モデルを低価格で利用できるマイクロソフト社の「Azure AI Document Intelligence」を採用しました。初めて読み取りする文章で新たに学習させることなく、文書の構造をAIが解析し、項目とその値を抽出や表形式部分の抽出ができます。実証実験を通して汎用のモデルでも良好な読み取り精度が出ることを確認できました。汎用のモデルを利用すると、フォーマットごとに学習させる手間をかけずに読める反面、専用に学習させたモデルに対して読み取りの精度が落ちてしまうデメリットがあります。汎用のモデルを利用するメリット・デメリットをご説明した上でご導入いただきました。読み取り機能や読み取り結果の反映は、既存のシステムへ組み込むことでシームレスにお使いいただけるようにいたしました。
AI関連の技術は日々進歩しているため、今後も読み取り精度の向上や新たな活用法の模索を通じて、より良いご提案をできるように精進していきます。

株式会社アキタシステムマネジメント
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