日本の伝統文化を継承していく新たなる挑戦
オンライン教室で和楽器をもっと身近に!

有限会社梅屋
代表取締役
梅原 久史 うめはら ひさし さん

有限会社梅屋
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 和楽器の販売やメンテナンスなどを行う「有限会社梅屋」。「YouTube」で和楽器の初心者向け解説などの動画を配信するなど、和楽器の啓蒙活動に精力的に取り組んできました。感染症拡大を機に、和楽器の魅力をもっと多くの人に、そして日本の伝統文化に触れる機会を増やしたいと梅原さんが着目したのは「オンライン教室」でした。

時流とともに伝統楽器の在り方が変化する時

導入したデジタル技術を教えてください。
ビデオカメラ2台、ワイプをモニターに表示する機械、音質を良くするためのマイク、講師用のマイクを導入し、ZOOMを使用したオンラインの和楽器教室を立ち上げました。

オンライン教室では、教室をスタジオ、先生(左)をインストラクターと称し、和楽器により親しんでもらうようハードルを低くしている。お箏のレンタルを希望される方には、あらかじめ自宅に楽器を届けるのだとか。

導入したきっかけは何だったのでしょう。
感染症の影響を受け、リアルの教室に通うことにリスクを感じている人が多かったことです。元々オンラインでの販売は行っていたのですが、楽器のレッスンにもオンラインを活用できないかと思い、計画を立てました。補助金を活用しながら環境を整備し、「離れたところでも端末同士の相性が良ければできるよ!」と、学生や知り合いの方にスポット的に行ってみました。
それに、『伝統楽器は古い』と思われがちなのですが、こういったデジタル技術を介していけば、古臭いと言われることもなく時代についていけて良いのかな、と思いました。
導入にあたり、課題はありましたか。
生徒に何をどのように映せばわかりやすいのか、良い音声で届けるためにはどんな音響設備を入れたら良いか、レッスンの手法に頭を悩ませました。
課題解決のため、誰かにアドバイスは求めたのでしょうか。
さまざまな大学のオンラインレッスンのブログや、スタジオを運営している方のブログを読んで、機材を選ぶ参考にしました。また、知り合いの詳しそうな人に「どんな機材を使っていますか?」と聞くこともありましたね。

オンラインで和楽器をカジュアルに楽しむ

オンライン教室を実施してみていかがですか。

指向性が高いマイクと、ワイプをモニターに表示させる機械。機材配置が、質の良いオンライン教室を行う上でポイントとなる。

お箏は音色が柔らかいものの途中でノイズだと認識し余韻が消されてしまう場合があり、発信するこちら側のセッティングだけでなく受信いただく方のセッティングも大事でして、その点に苦労しました。一方、当社の三味線教室は激しく演奏する津軽三味線なので、相手に伝わる音が音階ではなく「バン!バン!バン!」という音でして…。三味線のオンライン教室はまだ実現できていません。
対面レッスンですと、些細なところに「それね、違う違う!」と言えても、オンラインでは「たぶん違う…」としっかり言葉で伝えられないことや、どの角度から撮影したら良いのかなど、まだ課題が多いです。教える側には『おそらくちゃんと弾いている、合っている』という予測変換がある程度必要のようでして、回を重ねるごとに相手もこちらも慣れてきていますね。
メリットとしては、演奏を横から見られること。対面レッスンだったら先生の横からは実際見られないじゃないですか。ですが、横アングルのカメラがあるので、絃のつかみ方や手の運び方を見ることができます。
機材の性能をすべて引き出して活用するにはもう少し訓練が必要ですが、今の時代にオンラインレッスンは必要な選択肢だと思いました。
オンライン教室の受講者はどういう方でしょうか。
学生など若い方ですね。手ほどきで終わってしまった方もこれまでにいまして、現在の受講者は2人です。
導入後に気づいたことはありますか。
ご自宅で設備を整えるのは大変かもしれませんが、「オンラインレッスンにしたら、先生のいるスタジオまでの移動時間がなくなって良い」という話は生徒さんから聞いています。 また、「趣味でできる教室ですよ」、「初心者のための教室です」といくら告知していても、「レッスンは着物じゃないとダメですか?」、「正座できないといけませんか?」という問い合わせが多いのが実情です。その点、「オンラインは和楽器を習うハードルが低くなった」と受講生が教えてくれて、気楽に初めていただけていますね。
導入当初は予想していなかったメリットがあり、うれしいです。

県内の中学生がお箏に親しむ仕組みづくりへ

導入時に期待していた効果は得られていますか。

インストラクターの手元を映す横アングルのカメラは、オンラインでは受講者の大きな助けとなる。

機材の習熟度はまだ低いですが、描いていたビジョンには近づいていると思います。 オンライン教室を事業として考えた時に、1人の先生が1カ所から数多くの生徒に対してグループレッスンをする形の方が良いかなと思っています。その代わり、できる限りわかりやすくするために、真横から撮るカメラと正面から撮るカメラを複合するなどさまざまな工夫が必要になります。事業的にはもう少し成長させたいという気持ちがありますね。
デジタル技術を活用して、今後はどんな展開を予定していますか。

対面レッスンのスタジオ。受講者は4歳~75歳までと幅広く、3人のインストラクター(お箏が2人、津軽三味線が1人)が指導している。

和楽器の啓蒙というところは意識していまして、今後は当社のレッスンのみならず、教育現場とオンラインでつながり、さまざまなことをお伝えしたいと思います。そのように伝統文化に触れるスタイルを変えることを否定的に捉える方もいらっしゃいますが、発展すればするほど伝統芸能は残っていきますし、残っていけば源流を守ることになると思うのです。だから、私はどんどんさまざまなことを試していこうと考えています。

2022年度、秋田県内の中学校の校外クラブ活動でお箏のオンライン教室をやることが決定しました。これをきっかけに、最終的には中学校でオンライン授業を行いたいですね。当社のスタジオとつなげたらお箏の教材を見せることができますし、楽器の仕組みやメンテナンスの作業場を見ていただくことも可能です。感染症拡大をきっかけに、オンラインでつながること自体に抵抗がなくなってきているので、全国各地のお箏を作る現場、原料の丸太を乾燥させる作業場ともつなげることができるかもしれません。

また、オンライン教室は、今後レッスンの質が問われることになるでしょう。タイムラグがどんどんなくなっていき、場所を選ばず容易に人とつながる世の中になると思います。質を高めていくにはお金がかかりますが、高めていけば、全員「せーの」での合奏や、パートに分かれて演奏できる可能性が広がりますね。そして、機材を使って配信ができれば一つの成果発表になると、楽しみでもあります。
デジタル技術の活用を検討している事業者様へ、メッセージをお願いします。
時代のニーズに合わせることは、企業の生き残りに大きく関係するところです。伝統を扱う業種ですが、今後も積極的に変化を取り入れたいと思っています。

実際に活用した支援制度(補助金など)

  • リモートワーク環境整備支援事業費補助金(秋田県)