ECサイト運営の課題をデジタル化で解決
定型業務の自動化で新たな展開へ注力を

ノリット・ジャポン株式会社
営業企画部 部長
加賀谷 大樹 かがや だいき さん

ノリット・ジャポン株式会社
(外部サイトに移動)

 プロダクトやプランニングを得意とする企画デザインや、飲食店を展開するフードサービスなど、さまざまクリエイティブ事業を展開する「ノリット・ジャポン株式会社」。地方産品開発・販売事業では、ECサイト「秋田ずらり」で秋田の特産品を広くPRしています。利用者が拡大するにつれて手一杯になった受発注業務の効率化を図るため、加賀谷さんはRPA※の導入を進めました。

※ロボティックプロセスオートメーションの略。人がパソコン上で日常的に行っている作業を、同じかたちで自動化するテクノロジー。

RPAで進める業務の効率化と精度のアップ

導入したデジタル技術の概要を教えてください。
当社で運営しているECサイト「秋田ずらり」の受発注業務について、RPAによる自動化を進めています。産直型EC固有の発注書作成や配送コントロールなどの効率化を図り、本格導入後もバージョンアップを続けています。
業務をデジタル化したきっかけは。

同社が運営する、産直型ECサイト「秋田ずらり」のトップページ。食べて美味しい秋田の特産品はもちろん、工芸品や書籍などの販売も行っている。

受発注業務の効率化と人為的なミスを防ぐために、RPAの導入を決めました。
昨今、感染症拡大が続く中でECサイトの売上が伸び続けています。当社のような産直型のECサイトは、自社商品においては自社の在庫の発送となりますが、メーカーや生産者の商品の受注になると業務が複雑化します。〈顧客から受注→先方へ発注→先方が商品発送→発送状況を確認→顧客へ連絡〉といった流れになるため、注文が増えるほどに受発注担当者の業務における工程が比例して増えるのです。また、産直ならではの悩みと言えますが、提携している方が高齢である場合など、アナログでなければ対応がなかなか難しいというのもネックになっていました。特にお中元やお歳暮の時期、テレビなどのメディアで商品が取り上げられた時などは多忙を極め、商品が売れる喜びがある一方、現場スタッフの疲弊は大きくなります。ECサイト運営から12年ほどになりますが、これまで受注データは手打ちがほとんどで、管理においては紙を膨大に消費していました。手作業が多いため、忙しくなると対応の遅れやミスが増えます。そこで、受発注業務のデジタル化を進めることに至りました。
導入にあたり、どのような課題がありましたか。
1つ目は、システムの導入と維持で、ある程度のコストがかかるという費用面です。それなりに売上がないと導入ができないと思い、導入にあたり補助金などを調べましたが該当がありませんでした。しかし、このまま収益を伸ばして現状の業務体制を是正できるのであれば可能であるとの判断で導入を決めました。
2つ目は、あらゆる注文条件に対応しなければならないことです。お届け希望日やラッピングの有無、商品と送料など、さまざまな条件の組み合わせがあるため、すべてに対応するプログラムを構築する必要がありました。
そして3つ目は、発送伝票を出力する際に必要な外部システムとの接続など、多くのテストが必要だったことです。
RPAの導入はどのように進めましたか。
はい。既存の製品では、当社の仕組みや条件にカチッとはまるものがない上に、 独自にゼロからの開発を行うのは難しく感じていました。そこで、以前から関係のあるIT企業に協力してもらいました。新たな商品開発、そして試験運用できることなど、先方にもメリットがあったので、スピーディーに開発・運用が進みました。システムを試験的に稼働してから、徐々に現場の声を反映させてブラッシュアップを重ね、本格的な運用を始めました。開発する側に業務の理解度がないと良いシステムを構築することはできないと思いますが、運用に至るまで細かい修正に最後まで対応いただいたこと、また、当社の要望や課題の共有に対する的確な助言に感謝しています。

ロス削減で生まれた“時間”と業務への“意欲”

デジタル技術を導入後、どのような変化がありましたか。

パソコンを開いたら発注書が作成済みに! 自動化されたことで、手作業の負担は格段に軽くなった。

1年ほど実験的に運用し、2021年秋から本格導入を開始しました。現在は、ヤマト運輸株式会社の「Web出荷コントロールサービス」に上手く連携することができて、出荷・発送や履歴管理をスムーズに行えています。受発注に伴う業務はRPA導入以降、簡素化されました。当初の狙い通り、システムに任せられる業務から人の手を離せたことで、受発注対応にかける時間や人為的なミスを大幅に削減することにも成功しましたね。配送システムとの連携など、まだまだ開発途中にあるとも言えますが、実際に本格運用を開始したことで、アイデアも活用の幅も広がっているように感じています。
想定していなかったメリットがあれば教えてください

自社商品の配送に関して、到着希望日ごとに注文情報の詳細をファイリング。発注書が自動ではき出されることで、この作業にもスピーディーに進むことができている。

スタッフのモチベーションの変化でしょうか。RPAを本格導入して業務におけるオペレーションを大方デジタル化したことで、紙などの経費や人件費といったコストの削減に加え、業務に携わるスタッフには時間と心のゆとりが生まれました。そのため、目の前にある作業をこなすのではなく、これまで以上に主体的に業務に取り組んでいく姿勢が見られるようになったことをうれしく思っています。せっかく好調な事業なので、今後も業績を伸ばしていきたいです。
そのほか、外部システムとの連携など、今後の展開の選択肢が無限にあることもメリットのひとつですね。
導入にあたり、御社ならではの工夫点はありましたか。
10年以上ECサイトを運営して、これまで蓄積してきた課題が比較的明確にありました。解決の手段としてのRPA導入でしたが、今では外部企業と連携して開発したことが強みになったと感じています。日々の業務で使いながら仕様をマイナーチェンジできるので、要望にフィットした使い勝手へと近づけることができました。
また、社内のみならず、ECサイト事業でやりとりする取引先から挙がった声を集約し、その要望を反映するよう心がけています。生まれた課題に、関わりを持つ皆で向き合い、解決へと歩みをすすめる体制は、当社ならではと言えるでしょう。

オペレーションの自動化で得た時間を活用

今後はどのような展開を予定していますか。

自社ブランド「UMAMY」の商品を梱包している様子。伝票の出力や箱詰め、梱包など、自社商品の発注業務は、2名のスタッフをメインに行っている。

ECサイト運営に伴うルーティンワークについては、引き続きRPAで業務効率化を図っていきます。人の手からデジタルへと業務を切り替えた分、“考えること”に時間を使っていきたいと思っていますので、新規事業や業務の更なる発展についてスピード感を持って取り組みます。また今後は、サブスクリプションなど、月額制サービスの導入を予定しています。
デジタル技術の活用を検討している事業者様へ、メッセージをお願いします。
産直型ECを運営している事業者様には、今回開発したRPAをぜひ使っていただきたいですね。
実際に活用しながら改善していく体制があれば、産直型ECの業務以外においてもRPAを適用することで業務負担を軽減できるため、使って損はないと思います。導入の際は、オペレーションを行う現場スタッフから、意見や要望をたくさんもらうことが非常に重要であると感じました。