社内のITインフラを整備して効率化を促進
販売管理システムによる業務の省力化に成功

株式会社楽器の店カネキ
代表取締役社長
和泉 慎太郎 いずみ しんたろう さん

株式会社楽器の店カネキ
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 総合楽器小売販売をはじめ、修理や調律までを手掛ける「株式会社楽器の店カネキ」。横手市などの秋田県南部で音楽教室や英語教室、リペアショップを運営するほか、秋田市へ拠点を設置したことで課題となっていたのが経理事務でした。業務の効率化を図るため、デジタル技術の活用を始めた和泉さん。システム導入後どのような変化があったのでしょうか。

業務拡大に伴い膨らんだ経理事務の負担を軽減

どのような経緯でデジタル技術を導入しましたか。

秋田市川尻に構えた「楽器の店カネキ 秋田店」。「RepairPoint楽」という名称で楽器販売事業をメインにしながら、技術スタッフによる楽器のメンテナンスやリペアを請け負っている。

きっかけは、2016年3月に秋田店をオープンしたことです。当社は1967年設立で横手市に開業し、地域に根ざした楽器専門店として販売やメンテナンスのほか音楽教室を運営してきました。新たに構えた秋田店は学校などへの楽器販売がメインではありますが、拠点が2カ所になったことで、従来の体制では経理事務が追いつかなくなってしまいました。これまで横手市にある本社では、起票・記帳等は手書き台帳によるアナログ管理をしていたため、仕訳帳への記入や納品書、請求書、領収書の発行まで、あらゆる業務において6度同じ品目や価格を手書きする必要がありました。横手市の取り引きは横手店で、秋田市の取り引きは秋田店で、それぞれに伝票を発行しておりましたが、業務拡大に伴って仕分けが煩雑に…。統括するのは本社である横手店であったため、発行した伝票を集約する手間や労力も膨らみました。当時は、独自の表計算ソフトによる管理方法を試そうとしましたが、誤って削除してしまった場合にはその履歴が残らず、人の手に頼った管理にも限界を感じていたのです。 そこで、業務の効率化を図るために、拠点ごとではない、クラウド型の販売管理ソフトを探し、導入することにしました。距離のある秋田市と横手市であっても、管理を一元化できることが決め手になりましたね。
システム導入にあたり、「渡敬情報システム株式会社」に相談したと伺いました。

業務の時間の大半を経理事務にかけていたが、「弥生会計システム」の導入で効率化を図った。

はい。当初は独自のサーバーでデーターベースを構築することも考えたのですが、費用面や導入までにかかる時間、そしてなんと言っても自社サーバーではセキュリティに限界があると思いパッケージ商品の販売管理ソフトを導入することにしました。情報処理ソフトやインターネットを利用したシステムはさまざまあり、パッケージ商品と言えども導入にあたってはしっかりとしたアフターフォローが不可欠であるように感じていました。
数ある経理システムの中から、永年活用され続けている「弥生販売管理システム」の導入を検討し、当社の複合機や音楽教室の防犯カメラ設置で取り引きのある「渡敬情報システム株式会社」が販売代理店であることが分かりました。かねてより信頼がおける担当者に相談したところ、拠点が複数になった場合の金額など不明点も明確にしていただけましたし、日頃からトラブルにも即応してくれる技術力を持っている企業だと感じていたので、システム導入をお任せしました。
導入にあたり、課題や不安があったそうですね。
切り替えのタイミングをいつにするかが一番の課題でした。移行期間をどのくらい設けるかによって、費用や業務に対する負担が変わることも想定しました。
私自身は大手電機メーカでの勤務経験から、社内のITインフラ整備を積極的に進めてきましたし、導入メリットは十分に理解していましたが、社長発信で始めたデジタル化の動きに、少なからず現場スタッフの戸惑いがありました。負担軽減のための改革と言えど、新しい仕組みに移行するのには不安があったと思います。

業務効率が目に見えてアップしてスムーズに

どのようにシステムの導入を進めましたか。

手書きの伝票発行は作業の手間に加え、膨大な枚数になる紙伝票の管理もネックに。伝票1つを受け取るために、秋田市と横手市を行き来したこともあったという。

目標としては3カ月でのシステム移行でしたが、導入してからも完全移行というゴールの設定がなかなか定まりませんでしたね。2020年度5月から補助金申請の相談をし、6月に見積もりを取り、8月に補助金審査が通り、10月から導入しました。まずは秋田店からやってみようとスタートし、従来の管理体制と併用して半年経つ頃には劇的に業務効率が上がりました。1日の勤務時間のほとんどに費やしていた“手書きしては確認”“横手の台帳と突合せ”“横手で記帳”という手書き業務が、約1〜2時間ほどに収まり「7分の1くらいの仕事量になった」という声が現場から寄せられたのです。そこで、2021年1月には横手店の楽器販売に関する伝票をデジタルに。2021年5月に横手の教室関係を含め8割程度までシステム化を進め、導入開始からおよそ8カ月かかりましたが同年8月に完全移行しました。
デジタル化による変化を感じていますか。
販売管理ソフトを導入したことによって、およそ1人分の事務作業量を省力化することができました。
会社として、今までの経理事務の体制はメイン2名+サポート1名の人員配置でしたが、文字で書かれた台帳を都度確認する手間が省けたこと、売掛・入金の確認をパソコンのみで簡潔に行うことができるようになったことが効率化につながっています。経理事務に費やされていた労力や時間がカットされるということは、そこに費やされる人件費が削減されるということです。システム運用によるランニングコストはありながらも、経理事務は5分の1にまで圧縮することができました。
想定していなかったメリットはありましたか。
導入前は経費をここまで削減できるとは思っていませんでした。 経理事務は会社を運営する上で要の業務ではありますが、時間と労力を掛け過ぎたくないというのが経営者の本音です。デジタル化することのメリットのひとつは、精度が上がるということ。販売管理ソフト導入後は転記ミスもなく、データベースで一元管理することでミスやズレが合っても即座に見つけられます。
また、将来的に拠点を増やしたとしても、IDを発行してパソコンさえあれば活用し続けていけるシステムであることにメリットを感じています。
当社に限らず、時代に即したシステム導入によって、経理業務は将来的にもっとスリム化していくのではないかと感じました。

ITインフラの整備が会社を支える財産になる

デジタル技術を活用して、今後はどんな展開を予定していますか。

技術を持つスタッフしかできないリペア業務。購入後のアフターフォローに、より注力する体制も整った。

顧客の思考や定期発注の動向を解析して、こちらからオススメをどんどん案内していきたいと考えています。
今までは顧客別の担当が経験値に基づいてオススメするのが常でした。例えば、ピアニカやリコーダーなどの子ども向けの学習教材と、趣味で必要とする管楽器は売れる時期が異なりますし、音楽教室を運営している方であれば求められる楽譜は、その指導方針や指導者の出身校によっても異なります。そこで、データ分析によって、顧客の傾向に的確な提案をしていきたいのです。デジタル化を進めて過去のデータが台帳や納品書をめくることなく、お客様ごとに画面で見られるようになったことで、時期ごとに顧客が求めているであろうモノがわかるようになり、担当者を固定して感覚に頼り切らなくてもよくなりました。
さらに、ヤマハの教室はフランチャイズではなくてオーナー制なので、同じような悩みを抱えるオーナーたちへ情報共有をして、デジタル化をオススメしたいとも思っています。
デジタル技術の活用を検討している事業者様へ、メッセージをお願いします。

ソフト導入した当初は戸惑いのあったスタッフたちも、多くが“スマホ世代”ということもあってスムーズに業務を移行。経理事務以外の業務に邁進することができている。

〈デジタル〉というなんとなく未来的な言葉に足踏みし、余分な経費が出るのではないかと考えてしまいがちです。今回の販売管理ソフト導入にあたっても初期投資やシステム移行には不安がありました。しかし、後々の事業展開を考えた時に、このタイミングでのデジタル化は不可欠でした。導入によって便利になることはもちろん、長期的に見て経費がどれだけ軽くなるかという視点も必要です。
経営者自身がシステム化に疎い場合は、信頼のおける情報処理システム会社やデジタルに強い周りの人に相談した方が良いと思います。当社の場合は、補助金については横手商工会議所の職員が親身になって教えてくれましたし、システム導入にあたってはかねてより付き合いのある情報処理システム会社がサポートしてくれました。悩みや疑問を抱え込まずにとにかく相談することが、安心して導入するための一番の近道だと思います。デジタル化に活用できる補助金で社内のITインフラを整備していくことは企業の財産になるはずですので、コロナ禍ということもあり数多くある補助金を活用してデジタル化に取り組んでいただければと思います。

実際に活用した支援制度(補助金など)

  • 小規模企業者元気づくり事業費補助金(秋田県)