需要拡大の一途をたどる通信販売事業の課題
デジタル化で受注業務や勤務体制の改善へ

有限会社ビー・スケップ(山のはちみつ屋)
代表取締役
西村 隆作 にしむら りゅうさく さん

有限会社ビー・スケップ(山のはちみつ屋)
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 創業から45年、養蜂・蜂産品の生産販売および加工販売などを行う「山のはちみつ屋」をはじめ、お菓子工房、ピザ工房を通じてハチミツの魅力を発信する「有限会社ビー・スケップ」。感染症拡大を機に通信販売が売上をぐんぐん伸ばし、商品展開の拡がりを見せています。そんな中、代表の西村さんはある課題に直面しました。

通信販売のひっ迫状況を自動化で打開する

導入したデジタル技術を教えてください。

これまでパソコンに手入力していた業務を自動化するRPA※です。導入によって、DM会員様からの郵便で受けた注文書をスキャナで読み取った後や、オンラインショップからの注文データの取込後に、自動で伝票が作成されるようになりました。

※ ロボティックプロセスオートメーションの略。
人がパソコン上で日常的に行っている作業を、同じかたちで自動化するテクノロジー。

2022年1月からスキャナと専用パソコンを業務に導入。注文書の読み取り後、自動で請求書と送付伝票が書き出される

導入したきっかけは何だったのでしょう。
東日本大震災以降、直営店の来店客数が減り、通信販売の需要が増加していきました。それに伴って商品点数もどんどん増え、近年の感染症の影響で売上は全体の50%超を占めるまでになり、受注件数に対して自社内にあるコールセンターのマンパワーが足りなくなりました。当社はハチミツ商品を取り扱っていることから健康の観点でご年配の方からの注文が多く、電話が6割を占めます。残るオンライン2割、郵便2割の受注も含め、コールセンターの業務は肥大化。電話の接客に十分な時間をかけられない状況になってしまいお客様からのクレームも次第に増え、「コールセンターを何とかしなければならない!」というのが急務になりました。
自動化できるところは自動化し、コールセンターの負担を軽減して丁寧な対応ができるようにしたい。こうした状況を、これまで何十年も経営相談等でアドバイスをいただいている北都銀行様に相談したところ、通信販売の受注処理業務のうち、自動化できる部分にRPAを導入することを提案いただきました。コールセンターの増員も検討しましたが、入力業務の自動化でスタッフの負担を抑えられるならと、RPAの導入を進めることにしました。
スムーズに導入できましたか。

まずは、ご提案いただいた仕組みが現実的に使えるかどうかの判断が必要でした。次にスキャナでの読み取り精度が一定の基準を満たすことが条件で、そこをクリアしたらロボット入力(RPA)の段階に進めるとのことでしたので、注文書をスキャナでの読み込みに合わせて改良するところから始めました。
当初は2カ月くらいで導入できると思っていましたが、自社に合わせたプログラムをロボットに教えるのが難しいということがわかり、何度もプログラムの調整を重ね、構想から1年がかりで導入できるようになりました。

書式定義に当てはまらなかったり、文字が上手く読み込めない注文書は自動でエラーを表示する。

RPAの修正を重ねた先に次なる課題の解決へ

伝票作成を自動化してみていかがですか。
これまでなかった工程が組み込まれたことによる、操作に不慣れな時期と、細かい調整や通信販売の繁忙期外とが重なり、効率化が実感できるまで少し期間を要しました。RPAの導入後、ロボットの読み間違いなど細部の手直しや、実動してから気付いたこともあり、最初は苦労しましたが、現在は少しずつ使用頻度が上がり、効果を実感しています。システムの微調整はまだ必要でして、システム導入を委託したフィデア情報総研様の担当者にアドバイスいただくこともありますね。
ベンダー様のアフターフォローは心強いですね。
以前にもお付き合いがあった企業ですし、この分野の専門集団ですので安心して導入を任せられました。私共の細かい要望を聞き取り、対策を練って日々ご対応いただき感謝しています。
導入して気付いたことはありますか。

コロナ禍での導入となりましたが、会員様はもとより実店舗にお越しできない方、そして巣ごもり需要なども増え、パソコンやスマートフォンからの通信販売の利用促進のツールとなると捉えています。ネット広告を通じたオンラインショップの利用促進や、DMの各頁にQRコードを貼り付けるなど会員様に向けて今後取り組むオンラインショップへの利用誘導に、さらに力を入れていきたいと思いました。

通信販売のうち、オンラインショップからのメール受注は約2割。伝票作成を自動化した今、6割を占める電話受注をオンラインショップに誘導することを目指す。

ロボット入力の利点が発展的な可能性を生む

導入当初に期待していた効果は得られていますか。
はい。コールセンターのスタッフは定時退勤できる日が増え、他部署からの人材応援も解消され、ロボット入力の良さを実感しています。また、入力をロボットに任せる分、別の業務をすることが可能になりました。入力の自動化は3月に本格運用したばかりですので、商品マスターを年間のキャンペーンごとに作ってロボットに覚えてもらうことで、1年後には順調に効果を発揮するのではと思っています。
今後はどんな展開を予定していますか。

ロボット入力は一定速度で業務できるところが利点ですので、今後は夜間に伝票作成ができるよう、プログラムを組みたいと思っています。また、他部署での業務にも使用できると考えています。

年に5回ほど大きいキャンペーンを実施している同社。夜間にロボット入力できる仕組みを作れば、さらなる受注増加にも対応できる。

RPAの活用を検討している事業者様へ、メッセージをお願いします。
当社での導入にあたっての反省として、「何をどこまでロボットで行うのか」、「これで本当に良いのか」など、想定される事項について細部まで現場スタッフとベンダーが一緒にもっと時間をかけて打ち合わせるべきだったと思っています。後から気が付き改良することになるとコストが増えますので、事前の準備が大切です。小規模の当社の受注システムに生かせるのですから、秋田県内にはRPAの活躍が期待できる企業がまだたくさんあると思います。

実際に活用した支援制度(補助金など)

  • かがやく未来型中小企業応援補助金(非製造業)