ハンディターミナル導入で正確な在庫管理を実現
業務効率化で顧客対応強化

有限会社小西タイヤ
営業本部長
佐川 純 さがわ じゅん さん

有限会社小西タイヤ
(外部サイトに移動)
創業44年目、親切かつ丁寧な対応で県内外のユーザーから厚い信頼を獲得している、タイヤ&ホイール専門店「有限会社小西タイヤ」。県内随一の品揃えと価格を誇り、実店舗はもちろん、ECサイトでの販売にも力を入れています。販売本数と在庫本数が増加する中で課題となった〈在庫管理〉のデジタル化に取り組みました。

作業スタッフの負担が大きかった管理体制を一新

導入したデジタル技術について教えてください。

スマートフォン型のハンディターミナルに当社独自のシステムを組み入れたことにより、商品の棚卸し・入出庫・ピッキング等の〈在庫管理〉とタイヤの交換に関わる〈作業管理〉を効率よく行うことができるようになりました。

事業所に戻らなければならなかったこれまでのシステム入力作業を現場で行うことができるようになり、在庫状況や作業の進捗状況のリアルタイムな更新・共有が可能になりました。

以前は、どのような課題がありましたか?

豊富な品揃えからお客様のニーズに合わせて商品を提供することが強みの同社。数万本の在庫に対応するには、無駄なく正確な作業をしていかなければならないと考えた。

〈リアルタイムな在庫管理ができないこと〉〈手書きのリストに従って目視でピッキング作業をしていること〉〈在庫の保管場所が明確でないこと〉により、様々な課題が発生していました。

在庫管理については、売上伝票や仕入伝票の情報を1件ずつシステムに手入力して在庫数を管理していましたが、システムに在庫数の変動を反映するまでに、運用上どうしてもタイムラグが発生していました。そのため、システム上では在庫があるが、実際は在庫がないため、商品を販売できないことがありました。

ピッキング作業は、受注伝票を見て必要なタイヤの種類や本数を紙に書き出し、そのリストを基に倉庫から商品を集めていました。リストの作成に時間がかかっていたことや、そもそもリストに間違いがあり、ピッキングのやり直しが発生することが問題となっていました。また、紙のリストではお互いの作業状況が把握できないため、複数の作業者が同じ商品を重複してピッキングすることもありました。さらに、タイヤは見た目では区別を付けにくいうえに、側面に記載されているサイズも「195/65R15」「195/65R16」のように表記が似ていて、目視によるピッキングでは商品の取り間違いが1日数件は必ず発生する状態でした。

そして、在庫の保管場所については、本来なら商品入荷時に荷受けした人がどのタイヤを何本どこに置いたかをメモし、事務所に戻ってシステムに入力する必要がありましたが、現実的には不可能だったため、在庫の保管場所を明確に把握できていませんでした。そのため、記憶と勘を頼りにしていましたが、倉庫が何か所かあるため、商品を探す単純な作業にも膨大な時間がかかり、従業員の負担となっていました。

いつ頃からデジタル化に取り組まれましたか。

デジタル化に取り組み始めたのは、約3年前です。まだまだ道半ばではあるものの、徐々に現場で活用できるレベルになってきました。

デジタル化を始める前から、繁忙期などにはアルバイトや派遣会社に依頼して作業に必要な人数を確保する対策をしてきましたが、その方たちにはピッキング作業に必要な商品知識がないため、作業効率が上がりませんでした。そこで、必要なのは人数だけではないと考え、デジタル化の取組が始まりました。

導入にあたり、どんな課題がありましたか。

当初はスタッフ間での操作スキルの標準化を課題として想定していましたが、実際に一番苦戦したのはシステム開発者とのやり取りです。システム目線で話す開発者に対して、我々は作業目線で話すので、かみ合わない部分がありました。そのため、今まで感覚的に行っていた作業や作業場面毎の言葉のニュアンスを言語化することと、複雑な業務フローを開発者に理解してもらうことが必要でした。

初めは、業務の細かいフローをホワイトボードにたくさん書き出しながら開発者にシステムへの要望を伝えていましたが、いざ書き出してみると業務フローがあまりに複雑で、説明しきれませんでした。そこで、まずは一旦システムをつくってもらって、実際の画面を見ながら、「この部分が足りない」「いきなりこの工程ではなく、この間にこういう作業が入る」と都度要望を伝える方法をとりました。

最初のうちは、我々が伝えたいことを理解してもらえず、システムに我々が合わせていた部分がありました。社内には常駐して3年目になる開発者が一人いて、だんだん勝手が分かってきて「これって実際こうした方がいいってことですよね?」と提案が出てくるようになり、現在では、現場の声をすぐに汲み取り、早く細かく機能改修できるようになりました。

作業体制が大きく改善 現場スタッフも前向きに取り組む

導入効果はいかがですか。

荷受けした時点でタイヤのバーコードと床に貼られた二次元バーコードをハンディで読み込み、その場で仕入れ状況と商品のロケーションをシステムに反映。ピッキングの際は、受注データから自動作成されたリストを基に、バーコードを読み込みながら作業を進める。在庫の保管場所が明確になったことで、倉庫内を探し回ることもなくなった。

特に効果が得られたのがピッキング業務です。繁忙期には7~10名で1日6時間程度かかっていましたが、今はその半分以下の人数で、作業時間も3時間程度で終えることが出来るようになりました。

間違えた商品をピッキングしようとするとエラー表示がでるため、ピッキングミスはほぼゼロとなった上、表示されるリストは複数のハンディで共有されているため、複数の作業者の進捗状況をリアルタイムに把握できることから、重複してピッキングすることもなくなりました。作業者同士が離れた場所にいても「もう少しで終わるぞ」と作業の進み具合を感じながら作業できるようになりました。

現場スタッフたちの反応はいかがですか。

導入する前はやはり「元のやり方が良い」という声もあり、スタッフの反応が気になっていましたが、スタッフみんなが「勤務時間内に作業が終わらない」「帰れない」「疲れる」と同じ問題を共有していたため、「それが解決されるのであればやってみよう」と協力的でした。スタッフ全員がこのシステムを活用しようと前向きに取り組んでくれたおかげで、導入後、短時間で効果を得ることができました。

スタッフが前向きに取り組んだのは、スタッフ自身がデジタル技術を使ってみて効果を実感しているのが一番大きいと思います。「声を上げれば改善される」という気持ちが芽生えていて、最近では改善案や意見が多く出てくるようになりました。システムの改善のためには、業務フローや必要な機能などの細かい部分をスタッフから吸い上げていく必要がありますが、思っていたよりも積極的に「この部分がダメ」「こういう機能があればもっと良くなる」と声を上げてくれるため、手応えを感じています。

当初想定していなかったメリットはありましたか。

1点目は、想定以上に専門知識や確認作業の必要がなくなったことで、以前からアウトソーシング化を視野に入れていたピッキング業務に加え、商品入荷時の入庫作業もアウトソーシング化できたことです。まだ試験的ではありますが物流会社に作業を任せられるようになったので、朝からピッキングに追われていたスタッフが、今では販売業務や取り付け作業に時間を割けるようになりました。

2点目は、ハンディの使用によってスタッフの動きが統一されたことで、課題の早期発見・早期解決ができるようになったことです。今までは、課題解決のために口頭でルールを伝えても、結局はスタッフ毎に自由な方法で作業をしてしまうため、作業方法がバラバラになっていました。しかし、ハンディを導入してからは必ずハンディを使った操作となり、多少やり方はちがっても統一した動きになるので、「ここの導線が悪い」「この作業の時にこれが邪魔」という風に同じような課題が挙がってくるようになりました。挙がった課題を解決する際は、新たなルールをシステムに織り込むことで、改善の速度が速くなりました。

導入にあたって工夫された点は。
現場の作業者にとっては今までにはなかったハンディターミナルを操作する行為が発生するため、出来るだけ手間にならず簡単に操作出来るように工夫しました。ハンディの操作で本来の作業時間が削減される事のないように、一度の操作で様々な管理が自動で更新されることを重視して開発しました。操作の手数が少ないことが、スタッフが使いこなせている要因になっていると思います。

中小企業がデジタル技術を取り入れる効果を実感

今後はどんな展開を予定していますか。

佐川部長と小玉マネージャーは「デジタル化で便利さと効率化を追求することにより、お客様へのサービスに時間をかけられるようにしたい」と話す。

工夫した点で、〈手数を減らしたこと〉を挙げましたが、バーコード読み取りは商品一つずつ行っていますので、楽にはなりましたが、まだ作業負荷が大きいと思います。将来的には、無線通信でタグのID情報を読み取る「RFID」や、AIが最適な動線を算出する「ピッキングルートナビ」を導入し、さらに効率良くミスの少ない商品管理を行いたいと思っています。

また、自社ECサイトの構築にも取り組みたいと思っています。商品の購入や、タイヤの取り付けの予約まで全て完了できるようなサイトにすることで、遠方からお越しくださるお客様の来店が一度で済むようにしたいです。

デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。

今回、限られた資金と人材の中で成果を出さなければならない中でデジタル化に取り組む事の効果を実感しました。デジタル技術は大企業が活用しているイメージがあるかと思いますが、人材不足などに直面している私たち中小企業こそが取り入れ活用していくべきものと思います。導入までにコスト面や新しい取り組みへの反発等もあるかもしれませんがあきらめずやり遂げれば成果が得られると思います。

また、今回導入したハンディターミナルはスマホ型なので、普段からスマホを使い慣れている若いスタッフはもちろん、年配のスタッフも指でボタンを押すだけで操作が可能なので、導入後、比較的早い段階で操作に慣れると思います。画面も大きく、文字の大きさも簡単に変更できるので、おすすめです。

実際に活用した支援制度(補助金など)

  • かがやく未来型中小企業応援補助金(非製造業)