伝統的工芸品「大館曲げわっぱ」×デジタル技術
VR・ARでいつでもどこでも商品を閲覧可能に

株式会社大館工芸社
代表取締役社長
戸嶋 一之 としま かずゆき さん

株式会社大館工芸社
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秋田県の伝統的工芸品「大館曲げわっぱ」を製作製造・販売する「株式会社大館工芸社」。職人の手仕事で丁寧につくられた同社の曲げわっぱは多くの人に愛されています。しかし、コロナ禍で商品の実物を案内できない状況に直面。その状況を打破するため、ショールームと商品のVR(仮想現実)・AR(拡張現実)化に取り組みました。

コロナ禍で商品の実物が手に取りにくい状況にスト

まず初めに、曲げわっぱの魅力とはどのような点ですか?
曲げわっぱの魅力とは、〈見た目〉と〈機能性〉であると考えています。
まず〈見た目〉の魅力は、秋田杉ならではの美しい木目です。杉の中でも、秋田杉は年輪の幅が狭く均一であると言われています。日本一日照時間が少ない秋田でゆっくりと時間をかけて育っているため、この木目が出来上がるのです。その秋田杉を使用した曲げわっぱからは、優雅な風合いや温かみが感じられ、食事のひと時をより豊かな気持ちで楽しむことができます。
また、〈機能性〉の面でも、秋田杉の性質が活かされています。杉の木目のうち、色が薄い部分(夏目)には目に見えない穴がたくさん空いていて、そこから蒸気が抜ける機能があります。その細かな穴がご飯の余分な水分を吸収することで、時間が経ってもご飯がふんわりとしていて、美味しく食べられるようになっています。
さらに、弊社の曲げわっぱには、この吸湿性を保ちつつ、特殊なコーティングをしています。コーティングをしていない白木の製品よりも吸湿性は落ちてしまいますが、この加工によってシミの心配がなくなりますので、揚げ物を入れたり、洗剤で洗ったりすることができます。そのため、より普段使いしやすく、より長い期間愛用いただけるようになっています。
デジタル技術を導入したきっかけについて教えてください。
2020年の春に発令された緊急事態宣言により、弊社の商品を販売する百貨店に休業要請が出たことがきっかけです。
弊社で一番人気のシリーズはお弁当箱ですが、サイズ表記を〈大〉〈中〉〈小〉としているため、「このお弁当箱はどれくらいの大きさですか?」とお客様から電話でお問い合わせいただくことがあります。コロナ禍以前には、お客様のお住まいから近い取扱店舗をご案内し、「ここに行っていただければ商品の実物をご覧いただけます」という説明をしていました。しかし、百貨店の休業をはじめ、お店に行きたくても行けない状況になってしまったため、従来のご案内ができなくなってしまいました。
そこで、実際に手に取ることができなくても、商品の魅力やサイズ感を伝えることはできないかと検討する中で、VR・ARを活用したサービスを導入しました。
導入したサービスについて教えてください。
PC・スマートフォン・タブレット等から「いつでも」「どこでも」自由に「曲げわっぱ」をご覧いただけるサービスです。
VR技術によるバーチャルショールームでは、仮想空間上に本社ショールームを再現し、実際に展示場を歩き回るように360度からご覧いただくことができます。
また、バーチャルショールーム内にある6つの製品はVR・ARで見ることができ、実際のサイズ感や質感を確かめることができます。

バーチャルショールームとショールーム内の商品

リアルなARで普段使いのイメージが可能に

導入に当たり、何か課題はありましたか。
VR・ARで「曲げわっぱ」をうまく再現できず、苦労しました。最初に完成したものは、色合いが全体的に黒っぽくなっていて、木目の風合いや色味が全く伝わりませんでした。より実物に近い質感になるようこだわり、導入をサポートしていただいた企業と何度もやりとりを重ねたこともあり、当初の予定よりも導入が数か月遅れてしまいました。

人気商品のひとつ「小判弁当(中)」。実物(左)の木目や木の風合いがAR(右)で再現されている。

導入の効果は感じていますか。
このサービスの開始によって、お客様が大館市や百貨店まで足を運ぶことなく、ショールームにいるようなリアルな体験が可能となりました。商品のARを食卓等の上に表示させ、実物の食器などど比較することで、サイズ感がつかみやすくなっています。
また、各メディアに取り上げられたこともあって、リリース時には公式ウェブサイトの閲覧数が倍増し、注目してもらえたと感じています。

やぐら弁当のARをデスク上に表示した様子。実物のペットボトル飲料やコップなどと比較すると、サイズ感がイメージしやすい。

導入に当たって工夫された点は何ですか。
普段使いしているところが想像しやすいよう、実際にお弁当にご飯やおかずを詰めた画像を入れている点です。
また、今回のサービスの他にも、各種SNSに力を入れて取り組んでいます。オンラインストアを改善する前段階の取組として、まずはサイトを閲覧するユーザーを増やしたいと考えています。そのため、オンラインストアへ来てもらう入り口を増やす目的で、Instagramやtwitterなどで商品やイベントをPRしています。
特に、Instagramでは社員のお弁当の写真を毎日投稿しています。この投稿も、実際に使用するシーンをよりイメージしやすくなるように、という社員のアイデアから始まったものです。

同社の公式Instagramでは、実際に社員が持参したお弁当やクーポン情報を投稿している。

大館工芸社各種サイトのご紹介
公式オンラインショップ https://magewappa.shop-pro.jp/
公式Instagram https://instagram.com/odatemagewappa?igshid=YmMyMTA2M2Y
公式Twitter https://twitter.com/oodatemagewappa?s=21&t=MyW6nzRsa5r6Cs5LvDU_Gw

トライ&エラーでデジタル技術の導入を

今後はどんな展開を予定していますか。
杉板の選別作業にAIを導入して効率化を図りたいと思っています。
仕入れた杉板は、加工の前に、曲げやすい板とそうでない板に選別します。曲げにくい・折れやすい板は曲げわっぱには使えませんが、お弁当の蓋や底面の材料にすることができます。現在は、その選別作業を経験と勘に基づいて行っているため、曲げてみるまで曲げやすさが分かりません。そのため、曲げやすいと思った板が折れてしまったり、時間が経ってから割れてしまったりすることが頻繁に起きている状態です。AIが自動で木材を選別することでその課題を解決できれば、画期的だと考えています。
また、生産管理システムの導入も検討しています。
弊社の工場には新品・修理それぞれ専用の製造ラインがありません。また、製品によっては、前後の工程を行ったり来たりすることがあり進捗管理が難しいため、製造しているモノや修理でお預かりしているモノが同時並行で入り混じってしまうことがあります。その点も、デジタル化により解決したいと考えています。
デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。
デジタル技術を取り入れることで様々な作業を効率化しやすいですが、効果が必ず出るとは言い切れません。そのため、費用対効果を考えて踏みとどまってしまう企業もあるかと思います。
しかし、経営はトライ&エラーで取り組んでいくものだと思います。自分たちが持っている課題の解決や、理想像の実現のためにも、今までに無い新しい技術を積極的に取り入れていくことは、会社のためになるのではないかと思います。

システム導入を支援した方からのメッセージ

戸嶋 一之

株式会社スリー
取締役
奥村裕之さん

今回のプロジェクトでは、「自宅にいながら実際に大館工芸社様の店舗で買い物しているかのような体験をしてもらいたい」という思いで制作を行いました。特に制作の中でポイントとなっているのが、曲げわっぱARになります。曲げわっぱはサイズが大・中・小のようになっているため、どうしても写真だけだとサイズ感が伝わりにくいという課題があったそうです。そこで、ARを導入していただき自宅にいながら実際のサイズ感を感じられるように弊社の方で制作を行いました。
〈VRで店舗を体験していただき、ARで商品を知る〉このような流れで見にきて頂いた方には、大館工芸社様の店舗を疑似体験していって欲しいです。そしてぜひリアル店舗の方にも足を運んで頂けたらと思います!

株式会社スリー
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