チャットツールを活用し情報・資料共有を効率化
戦略的な導入で社内全体への浸透に成功

株式会社村岡組
代表取締役社長
村岡洋平 むらおかようへい さん

株式会社村岡組
(外部サイトに移動)

1939年の創業以来、横手市のまちづくりを支え続ける建設会社「株式会社村岡組」。公共インフラ事業からデザイン住宅建築事業まで、幅広い事業を手がけています。

情報共有の面で抱えていた課題を解決するために導入したビジネスチャットツールについて、全社員へのツール普及が成功した背景やツールの活用方法を伺いました。

スモールスタートにより全社的な連絡体制を確立

導入したデジタル技術について教えてください。

ビジネスチャットツール「LINE WORKS」を導入し、社内の情報共有の手段として、各自のスマートフォンやタブレットで業務に必要な情報をやり取りしています。5~6年前から試験的な運用を始め、現在では全社員がこのツールを活用して業務を行っています。

ビジネスチャット導入前には、どのような課題がありましたか。

情報共有・進捗管理・資料管理などで、課題を抱えていました。

特に、住宅建築部門では複数のプロジェクトを同時に進めることがあるため、多くのプロジェクトを担当する営業社員が、どの情報がどのお客様のものなのか整理しきれず、混乱してしまうことがありました。プロジェクトごとに、参加する営業担当と現場担当の組み合わせが異なることもあり、情報と人が入り乱れている状態でした。

建設業は現場が主な仕事場であるため、社員の全員が集まって情報共有・進捗確認をできる機会がほとんどありません。そのような状況の中で、電話・FAX・メール・カレンダーアプリ等を連絡やデータやり取りの主な手段にしていましたが、情報共有を受けて指示を出すまでにタイムラグがあることや、私への相談事項があっても、会社に居るタイミングが合わないためなかなか捕まえることができないといった問題がありました。

また、測量図など現場作業に必要な資料は、会社のパソコンに入っているデータをプリントアウトしてから現場に向かっていましたが、A4の印刷物では不明瞭な部分がある場合は、もう一度会社のパソコンからA3で印刷し直すといった手間がかかることもありました。

ビジネスチャットを導入したきっかけは何ですか。

情報共有を円滑にするため、一部の社員が一般的な個人LINEを使って業務連絡を取り始めたことがきっかけです。細かな連絡をチャットで行うことができる便利さを実感しましたが、やはりセキュリティの観点から重要な情報のやり取りにはメールも併用しており、個人LINEへ一本化ができないといった非効率な状況でした。

そこで、ビジネス版LINEのLINE WORKSの存在を知りました。LINE WORKSはセキュリティ面で安心できるほか、それまで電話・FAX・メール・カレンダーアプリなど様々な手段で行っていた情報・スケジュール・データ共有を全て一本化できることを知り、導入の検討に至りました。

重要資料もセキュアに格納・やり取りできる

導入にあたり、何か課題はありましたか。

過去に事務所のパソコンに顧客管理ソフトを導入し、導入当初から全社員分のアカウントを発行しましたが、現場が仕事場である私たち建設業者にとって、事務所でしか使えないソフトは馴染まず、ほとんど活用されなかった経験がありました。

LINE WORKSはツールとしては申し分ないと思っていたので、社員の隅々までこのツールを浸透させるにどう工夫するか、という一点が課題でした。

社内にツールを浸透させるため、どのように工夫しましたか。

顧客管理システムの失敗経験を踏まえて、小さく始めて社員の反応を見てから徐々に会社全体に広めていく方法が良いと考え、今回は秋田支店の一部社員5名だけで試験的に運用を開始しました。次の段階で秋田支店の建築事業部全員と、本社総務部門を加えて事務的な業務もLINE WORKSに結びつけることで、この運用システムがうまく当社の業務に機能することを確認できました。

次に、LINE WORKSの便利さを実感した総務担当が、今度は他部門への導入を求めるようになり、本社の建築部や土木部をどんどん巻き込んでいきました。LINE WORKSの評判が社内で広がったこともあり、最終的には狙い通り会社全体にツールを浸透させることができました。

連絡・報告・指示出しの効率・正確性がアップ

導入による効果はいかがですか。

情報共有・進捗報告や指示出しにおいて、瞬時に漏れなく確実に連絡をすることが可能になりました。

  1. チャットはメールに比べて気軽であること
  2. 必要な情報をプロジェクトごとに作成したトークルーム内でやり取りするため、各プロジェクトの情報の整理が自然に形成されること

以上の2点によって、対面での指示や電話での確認などの手間が激減しました。業務の報告も早くなり、報告に対するリアクションもすぐにできるため、仕事の進捗は早くなったと感じています。

また、今回の導入で一番仕事の生産性を向上できたのは、私自身であると感じています。LINE WORKSさえ確認していれば、社員同士やお客様のやり取りからプロジェクトの状況をすべてタイムリーに把握することができるため、膨大なメールから必要な情報を探し出す手間がなくなったり、出張中の隙間時間を活用してトークを確認できるなど、無駄な時間が少なくなりました。

さらに、徐々に社員からLINE WORKSの機能を活用した様々なアイデアが出るようになり、想定以上の活用がされるようになりました。私の枠を超えてツールが展開されていく様子から、期待以上の効果を感じています。

〈左〉プロジェクトや支店ごとのトークルーム 〈右〉写真付きの報告でより正確な情報共有ができる

想定していなかった使い方やメリットがあれば、教えてください。

元々は社内での使用のみを想定していましたが、LINE WORKSは一般のLINEとつながることができるため、お客様など社外の方とのやり取りにも役立っています。

例えば住宅部門では、施主様やそのご家族と社員を含めたグループチャットを作成しています。私の立場からは、お客様と社員のやり取りを見守ることができます。また、社員にとっては、セキュリティ面で問題なく重要な書類を送ることができるうえに、プロジェクトに関わる社員全員がお客様とのやり取りを把握できるので、お客様の安心感にもつながっていると思います。

ツール導入の前に、まずは業務フローの見直しを

今後はどんな展開を予定していますか。

各部門の業務の棚卸しをして、業務フローをもう一度見直し、自社に適切なデジタル技術があれば導入したいと考えています。

デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。

デジタル化というとツールばかりにスポットライトが当たり、ツールありきで考えてしまいがちですが、本来はツールの導入よりも先に、まずは自社の業務フローを整理すべきだと考えています。当社はたまたまLINE WORKSの導入がうまくいき、様々な問題を解決できましたが、逆に今、業務フローの見直しを後追いで進めている状態です。

業務の棚卸しによってツールの導入が本当に必要であるところを明らかにし、次の段階でツールの導入を検討することが必要だと思います。