アナログの体制をホテル管理システムの導入で改善
限られたスタッフ人数で、最大限効率的な運営を目指して
株式会社トラパンツイノベーションサポート(ホテルアルファイン秋田)
フロントスタッフ
船越 若葉
さん
株式会社トラパンツイノベーションサポート(ホテルアルファイン秋田)
2020年よりホテルアルファインを経営している「株式会社トラパンツイノベーションサポート」。
従来のエクセルによる予約管理や請求書発行、手書きによる領収書の発行などの業務を改善し、小規模施設向けのクラウド型ホテル管理システム導入までの道のりを伺いました。
手動作業の自動化と、フロントと清掃スタッフの連携強化
- 導入したデジタル技術について教えてください。
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予約管理や部屋割り、会計管理、集計など幅広く管理できるクラウド型のホテル管理システム「staysee」を導入しました。
このシステムは、旅行サイトからの予約情報を自動的に取り込み、客層の分析や経費管理も簡単に行うことができます。また、顧客管理や原価や経費を管理する売上分析機能を追加し、チェックアウトの状況と部屋の清掃進捗情報をタブレットとホテル管理システム間で遠隔で共有できるアプリも活用しています。
- デジタル技術を導入したきっかけは何ですか。
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複数の手段からの予約を一元管理できず、予約情報はエクセルで手動入力し、領収書は手書きで発行するなど、非効率な作業が多くありました。
これらの課題に対処するため、他のホテルがホテル管理システムを導入し、効率的に運用していることを知り、それが一般的であることに気付いたことがきっかけでした。
- 以前の体制では、どのような課題がありましたか。
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当初、お客様からの電話予約情報を手動でエクセルに入力し、予約の管理を行っていました。しかし、エクセルを1つのパソコンで開いていると、他のパソコンでのアクセスや保存ができず、予約情報を順番に入力する必要がありました。その結果、入力漏れなどの問題が発生し、リアルタイムで予約状況を把握することが難しい状況でした。
また、旅行サイトからの予約情報をFAXで受け取り、手作業でエクセルに入力し、売上集計や請求書、領収書の作成など、非効率な業務に多くの時間が費やされていました。
さらに、フロントと清掃スタッフ間でチェックアウトと部屋の清掃状況について電話の内線で連絡を取り合っていました。清掃スタッフの進捗管理をリアルタイムで行えず、フロントスタッフの待ち時間や報告後の確認作業にも時間がかかっていました。
デジタル化は作業効率だけではなく、サービス品質の向上にも繋がる
- 導入に当たり、何か課題はありましたか。
- スタッフの中には長年続けてきた作業工程を一新することに不安を感じたり、導入に反対する声もありました。
- 理由は、導入することで逆に効率が悪くなるのでは?操作トラブルはどれくらい発生するのか?など、導入後のイメージができないことが大きな要因でした。
- そうした状況での導入は、団結力やモチベーションを下げてしまうのではないかという懸念がありました。
- 導入に当たっての課題をどのように解決しましたか。
- 最初に行ったのは、導入した場合に予想されるトラブルや不足している機能など、導入に関する懸念事項をスタッフ全員で洗い出したことです。
- 現在の方法と比較して、導入後にどのように運用するべきかについて意見を交換し、1つでも問題が解消できなければ導入を見送る覚悟で臨んでいました。こうした課題を一つずつ解決していく過程で、スタッフ全員が導入後のシステムの運用イメージを共有し、不安を取り除くことができました。
- 経営陣だけではなく、全スタッフが導入を支持するようになりました。
(左)空室状況が1画面で確認が可能 (右)タブレットとシステム間で清掃状況が共有可能
- 導入後の効果はいかがですか。
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旅行サイトからの予約情報が自動的にシステムに投入され、エクセルでの手動入力作業が不要になったことで、手作業だった頃に比べて予約情報の入力ミスが減少しました。また、売上管理の部分では、以前はエクセルでマクロを使用して集計していたため、関数エラーなどで作業が止まることもありました。現在はすべて自動集計され、効率が大幅に向上しました。
清掃面では、清掃状況をリアルタイムで把握できるようになりました。部屋の破損などをタブレットで写真撮影し、システム上に登録することで、すぐに情報の共有化が可能となりました。フロント側では、部屋を訪れることなく、破損状況などをすぐに確認でき、業者手配もスムーズに行うことができます。そのため、売り止め期間を短縮できるようになりました。また、忘れ物の対応も同様にスムーズになりました。
導入効果の詳細については、これから分析したいと考えていますが、経理および総務の専任社員が産休中でも、フロントスタッフ全員で事務作業を分担しても負担なく運営できているため、社員1人分程度の作業時間を短縮できていると感じています。
また、接客面でもサービス向上に繋がると思います。
当ホテルではビジネス客メインでリピーターのお客様が少ないのですが、一部のお客様は何度も利用していただいております。以前はスタッフ個人の頭の中で記憶され、共有されていなかったリピーター情報も見える化されたため、お客様への配慮が増し、お客様に「またお越しいただきありがとうございます」といった細かな声掛けや気遣いができるようになり、接客面でもサービス向上が図れています。
今後さらに心に余裕を持ち、ホスピタリティを大切にし、「おうちに帰ってきたような感覚」で利用していただけることを目指しています。
デジタル化により生まれた余暇時間を活用し、マルチスキルな人材を育成
- 今後はどんな展開を予定していますか。
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今回、ホテル管理システムを導入したことで、スタッフが「何か他にやれることはないですか?」と言ってくれる場面が増えました。
少ない人数で運営していくためにも、導入後にできた空き時間を活用し、ホテル内のさまざまな業務にスタッフが参加をして、マルチスキルな人材を育成していきたいと考えています。さらに、営業活動などにも注力し、利用してくださるお客様を増やしていきたいと考えています。
- デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。
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当施設は施設改修など、ホテル運営に必要な投資を優先的に行ってきたため、ホテル管理システムなどのソフトウェアへの投資が遅れていました。
また、専用サーバーやコンピュータが必要なオンプレミス型のシステムは、初期投資が高額で、当社規模のビジネスホテルには不向きであるため、導入を見送ってきました。しかし、今回、小規模施設向けのクラウド型ホテル管理システムが存在することを知り、初期投資が不要で低コストで導入できることから、導入を決断しました。
人手不足が進む宿泊業ですが、少ない人数で食事や宿泊のサービスを提供し続け、燃料高騰が続く中で経費部分を抑えていくためには、思い切ったデジタル技術の導入を検討し、限られた人数で生産性を向上させ、マルチ人材化を進めてみてはいかがでしょうか。