「リアルタイムな情報共有」を目指したデジタルツールの導入
現場職員含めた定期的な会議を実施し、効果的な運用へ

社会福祉法人北杜
事業本部副本部長(障がい者支援施設ほくと 施設長)
戸嶋 光成 さん

社会福祉法人北杜
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秋田市において4拠点で、障がい者支援施設、特別養護老人ホームの運営をはじめ、障がい者の相談員、ケアマネージャーやホームヘルパーの訪問、ディサービス、在宅サービスなど、常に一人ひとりに寄り添った介護を提供する「社会福祉法人 北杜」。

介護記録のシステム化など、「リアルタイムな情報共有」を目指したデジタルツール導入までの道のりを伺いました。

働く環境の改善と採用活動の促進の、両面の観点からデジタル化へ

導入したデジタル技術について教えてください。
介護記録のシステム化、入居者の離床を感知しスマホへ通知するセンサー、スケジュールやファイルを共有可能なグループウェア、どこでも出退勤の登録が可能なスマート打刻サービス、給与計算クラウドと連動可能な勤怠管理クラウドなど、多くのツールをそれぞれの拠点で導入しています。

デジタル技術を導入したきっかけは何ですか。

人手不足の影響もあり、業務の効率化を進める必要性がありました。

また、現在の福祉業界での採用活動では、デジタル技術などを活用した業務効率化にどれだけ取り組んでいるかが、求職者からの評価に大きく影響するため、こうした取り組みを行っていないと、人材獲得が困難になってしまいます。そこで、働く環境と採用活動の両面から改善したいとの考えから、デジタル技術の導入を進めてきました。

以前の体制では、どのような課題がありましたか。

前は、職員が介護記録を紙に手書きし、その後エクセルに再入力するという手順で、二重の作業が発生し、職場内で介護記録を共有するまでに時間がかかっていました。また、2拠点で同時に打ち合わせを行う際には、参加する職員の都合を電話で確認し、日程調整を行っていたため、職員同士のリアルタイムでの情報交換が難しい環境でした。

加えて、全事業所の職員の勤務時間をタイムカードで管理していました。毎月約170人分のタイムカードを集計し、給与計算ソフトに登録する作業が行われていました。この作業は1拠点で実施されており、他の事業所からは約90人分のタイムカードがFAXで提出されるなど、アナログな手法が多く、作業の負担が大きかったと思います。

締め作業・紙管理を無くして、リアルタイムでの情報共有が可能に

導入するに当たって工夫した点はありますか。

導入前は、できるだけコストを削減するために、他の施設でのソフトウェアの導入状況を見学し、ベンダー企業から製品の紹介を受け、さまざまなデジタルツールの情報を収集しました。これらの情報をもとに、現場の職員と検討を重ね、確実な効果が得られるソフトウェアを選定しました。

導入時には、月に2回ほど管理者・現場の職員とベンダー企業との会議を開催し、使用感や問題点を洗い出し、機能のブラッシュアップと合わせて、会社内での運用方法なども平行して整理しました。やはり、現場の職員が使いやすいと感じる機能が重要であり、現場の職員含めて一緒に検討したからこそ気づけた問題点がありました。

導入後の効果はいかがですか。
介護記録のシステム化により、入居者の様子などの情報がタブレットから直接システムに登録できるようになったうえ、登録時には音声入力も可能となり、特記事項などの長文の入力がスムーズに行えるようになりました。
勤怠管理においては、職員が入力した内容が給与計算システムにて自動的に集計されるため、月締め作業が一切不要となりました。グループウェアに関しては、毎朝のミーティングで話す内容を一部資料化し、共有することで、ミーティングを1/3の時間で実施できるようになりました。また、ヘルパー事業所では、利用者からの急なキャンセルや予定変更がしばしば発生するため、ヘルパーの予定管理に手間がかかっていましたが、クラウド上で、事務所と現場の職員が情報を共有できるようになり、訪問スケジュールの調整作業が格段に効率的になりました。

(左)入居者ごとの予定登録画面 (右)入居者一覧の予定の確認が可能

現場スタッフの反応はいかがですか。

導入前は、現場のベテラン職員から、業務の運用方法が大きく変わることや、タブレット操作に対する不安の声もありました。

しかし、若い年代の職員が使用方法を素早く覚えることができたたため、ベテラン職員に使い方を教えながら導入を進めることができました。現在では、「楽になった」「導入して良かった」といった声が、ベテランの職員を含む多くの人から上がり、導入の効果を実感しています。

現場の職員が使いやすいと感じることが、スムーズなデジタル化・効果に繋がる

今後はどんな展開を予定していますか。

現在、ナースコールはPHS、介護記録はタブレット、会議録はPCなど複数の端末を使用しており、これをスマートフォンやタブレットのみで業務を完結できるようスリム化したいと考えています。また、管理業務面では、各個人のPCに散在している作業データをクラウドで一元管理し、セキュリティ面も考慮して編集権限を階層別に設定できるよう構築したいとの考えがあります。

一部の業務は既にデータ化が進んでいますが、押印などの承認が必要な書類など、まだまだ紙で行っている業務もあります。こうした業務もデジタル化を進め、スムーズな運用を図りたいと考えています。

デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。

当初は一気に導入できれば良いと考えていましたが、実際には管理側も現場側も十分に活用できなかったり、良いと思って導入したツールが上手く馴染まないことがありました。

どの業務にどのような課題が潜んでいるのか、また、それを改善するイメージを職場全体が共有できなければ、導入後の作業も見通しが立たないことがあります。そのため、現場を含めてじっくりと検討し、導入する前に良く理解することが重要だと思います。

◆システム導入等をサポートした企業様

・富士フイルムBI秋田株式会社 H&S事業部
・株式会社会社ワイズマン
・ケアコラボ株式会社

実際に活用した支援制度(補助金など)