デジタル技術の導入で、ストレスフリーな予約対応に

パティスリー ドゥ・フィーユ(有限会社セラヴィ)
代表取締役
清水 健志朗 さん

パティスリー ドゥ・フィーユ(有限会社セラヴィ)
(外部サイトに移動)

フランスで培った伝統の技を守りながら新しいものを取り入れ、秋田の土地にフランス菓子の魅力を伝えてきた「パティスリー ドゥ・フィーユ」。

売上の拡大に繋がったデジタルツールの導入について、これまでの経緯や改善の効果を伺いました。

予約対応の課題をデジタル化で改善

導入したデジタル技術について教えてください。

注文内容の誤りや商品の受取り忘れによるロス、電話予約の時間削減、さらには来店しなければ予約できない一部の商品に対する顧客のハードルを下げるため、ホームページ制作とホールケーキやクリスマスケーキ等の季節商品のオンライン注文・決済を可能にするECサイトを導入しました。

ホームページ上では、商品の味の特徴やサイズ、値段などが、写真と一緒に確認することができます。また、当店では女性が活躍できるお店を目指しており、女性従業員の紹介ページなども掲載しています。その中でも、女性従業員の目線での洋菓子の魅力や、おすすめの商品の紹介などを行っており、お客様にとって商品がわかりやすい仕様となっています。

ECサイトでは、ケーキの誕生プレートの文字やロウソクの種類などのオプションを選択することができ、簡単な操作で予約することが可能です。

制作したホームページ:写真とケーキの説明文で、ケーキの特徴がイメージしやすい

デジタル技術を導入したきっかけは何ですか。

一部のホールケーキについては電話予約を受けつけていなかったため、予約と受取りのタイミングで2度来店していただくことになっていました。私がお客様の立場ならば正直めんどうだなと感じていました。また、他店舗のモバイルオーダーを利用する際に、ストレスが無く利便性を感じ、当店でも同様のサービスを提供できないかと考えるようになりました。  

お客様から直接不便さを指摘されたことはありませんが、私自身の経験から感じた課題を改善することで、より良いサービスを提供できるのではないかと考えたのがきっかけです。
導入前の運用体制では、どのような課題がありましたか?

導入前は、クリスマスケーキは来店でしか予約を受け付けておらず、その場でパンフレットを見ながら注文書を記入してもらい受付を行っていました。電話による予約も一部行われていましたが、その場合は予約を仮に受け付け、来店時に清算することで正式に予約を受け付けるようにしていました。そのため、お客様にとっては予約のハードルが高かったと思います。また、手書きの注文書は人為的な誤りが生じやすいというデメリットもありました。

誕生日ケーキなどのホールケーキの場合は、電話による予約を受け付けていましたが、ろうそくの種類やクリームの変更などの要望を電話だけでやり取りすることは、非常に困難で、電話応対に時間がかかっていました。その他にも、ケーキの味やデザインの問い合わせに対して、言葉だけでお客様にケーキの特徴を伝えるのは難しく、誤解や行き違いが生じることもありました。

さらには、電話予約だとお客様が予約日を忘れてしまうケースがあり、ケーキの受取日が後日になることもありました。そのような場合、品質の良いサービスを提供するために商品を作り直しており、食品ロスが発生していました。
導入に当たり、何か課題はありましたか。

これまで続けてきたアナログな業務フローで20年近くの実績がある中で、そのやり方を変えるということは、会社としてハードルが高く困難な道のりでした。

また、デジタル技術に関するノウハウ不足や導入経費について不安がありました。特にコスト面での課題が大きく、補助金が活用できるかどうかが導入を決断する上でのポイントとなりました。「これぐらいの補助が出るなら導入してみよう」という気持ちが後押しになっていたと思います。

電話応対が削減され、売り上げも170%以上増加

導入前との違いは感じていますか。

ホームページを制作したことで、お客様が商品の写真を見て、ケーキのイメージを持った上での電話の問い合わせが増え、ケーキの特徴やオプションなどの説明が容易になりました。その結果、電話応対が以前の約50%に削減され、1日当たり約30分に短縮されました。また、当店とお客様の間で注文内容の行き違いがなくなり、クレームやトラブルが少なくなったと思います。

このような時間の短縮によって、空いた時間を技術向上のための練習などに活用できるようになったほか、有給休暇の取得も容易になったと感じています。

オンライン予約を利用するお客様に関しては、電話応対の必要が無くなり、予約が完了すると同時に事前決済も行われるため、当日の受取り忘れがなくなりました。昨年度は受取り忘れによる商品のロスが約21,500円分あったのが、導入してからはゼロになっています。また、新規顧客が増加し、ホールケーキの予約数が前年比170%以上増加し、売り上げ拡大に繋がりました。

オンライン注文サイト:オプションの選定など、直感的に操作しやすい作りにしている

導入にあたって工夫された点は何ですか。

導入後の運用については、従業員が誰でも作業できるようにするためにECサイトのマニュアルを作成しました。

また、ECサイトの画面は自ら編集可能で、他店舗の掲載内容を参考にし、直感的に注文できるような使いやすいデザインを心がけています。

商品の価値向上につながるデジタル化

今後はどんな展開を予定していますか。

オンライン注文時にお客様のニーズにより適切に対応するため、各種イベントごとの要望やアレルギーなどの特注対応に関する詳細な項目を入力できるよう、ECサイトの改善を進める予定です。

また、会計管理や勤怠、労務などのバックオフィスをデジタル化し、店舗全体の管理を効率的に行う取組を進めています。さらに、経費と売り上げのリアルタイムな可視化を従業員に提供することで、従業員の当事者意識を高めることも目指しています。
デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様にメッセージをお願いします。

菓子小売業は、他の業種と比べて生産性が非常に低い傾向があります。昔ながらの職人技を必要とする業種であり、長時間労働と低賃金が当たり前とされがちですが、商品の価値を高めるためにも、AIや自動化などのデジタル技術を積極的に活用することが重要だと思います。人間が行う仕事に付加価値をもたらすことができるよう、可能な部分は積極的に変えていくことで、今後とも様々なお客様のニーズに対応していくことができるのではないでしょうか。

既に一部の企業は積極的に取り組んでいますが、これからの時代は、デジタルの活用がますます重要となります。国や県、自治体などが助成や支援を行っている状況もありますので、変革の時期と捉え、積極的に挑戦してみてはいかがでしょうか。

実際に活用した支援制度(補助金など)