「必要なものを、必要なときに」
呼び出しシステムと無人搬送車の導入により現場の負担軽減と業務効率化を実現
JUKI産機テクノロジー株式会社
生産技術部生産技術課課長
松田 正樹
さん
JUKI産機テクノロジー株式会社(外部サイトに移動)
適切なタイミングでの部品等の自動運搬
- 以前の体制では、どのような課題がありましたか。
- 従前、工場内での部品等の運搬は、事前に決められた計画に基づき、専門の作業員が台車を使って行っていました。重い物を壊さないように気を使いながら、決められた時間に合わせて運搬する作業が大きな負担となっていました。
- また、作業中のトラブルや急な運搬指示の変更により、運搬した部品等を再度保管場所に戻す無駄な作業が発生していたほか、不要な部品を積んだ台車で工場内が煩雑になり、作業の妨げになることがありました。
- 導入したシステムの概要について教えてください。
- 必要な部品等を組立作業員が手元のスイッチで搬入指示をできるようにし、その情報を部品等の保管場所のモニターに表示するシステムを導入しました。これにより、適切なタイミングで必要な部品等を搬入することができるようになりました。
- また、合わせてAGV(Automatic Guided Vehicle無人搬送車)を導入し、運搬作業を自動化しました。
-
-
(左)運搬指示を行うスイッチ (中央)運搬指示状況を表示するモニター (右)AGV(無人搬送車)
- 導入前との違いは感じていますか。
AGVの導入により、運搬作業員の負担を大きく軽減することができました。
また、適切なタイミングでの部品等の運搬実現により、再運搬の手戻り作業がなくなったほか、不要な部品等が工場内に留まることがなくなったことや、AGVが運搬後に自動で所定の場所に戻ることにより、工場内の整理・整頓にもつながるなど、当初期待していた業務効率化の効果を実感しています。
様々な工夫により効果的な自動運搬を実現
-
導入に当たり、何か課題はありましたか。
-
工場内で使われていた台車が数百台あったので、これを有効に活用できる運用を考える必要がありました。
また、工場内は狭い通路が多く、スムーズに動いてくれるかという懸念もあり、複数台の同時運用時の衝突防止策も考える必要がありました。
-
導入の際に、課題をどのように解決されましたか。
-
実際にAGVの動きを観察‧分析し、様々な調整を行いました。機種については、いくつかのメーカーから実際にAGVを借りて、一番使用感の良いものを選びました。
また、AGVと台車を接続させるパーツを組み入れることで、工場内で使用していた台車を入れ替えることなく運用できました。この接続パーツも、社内で意見交換を行い、選定しました。
動線については、従業員の少ない時間帯に試験走行しながら、動きを調整しました。 また、AGV同士が衝突しないように、どちらを先に通すのか優先順位を決めました。AGVには衝突防止のセンサーもありますが、センサーに反応しにくい色の台車などにぶつかってしまうことがあり、反応しやすい色のテープを床や台車に貼りました。これらの工夫により、AGV同士が衝突することなく、スムーズに稼働できるようになりました。
また、弊社のAGVは床に貼られた磁気テープの上を走行する方式を採用していますが、一度動線を決めて稼働してみたところ、通路の角をうまく曲がりきれないこともあったため、磁気テープを再度貼り直すこともありました。
-
衝突防止のテープが貼られた台車と張り直された磁気テープ。AGV導入までの努力がうかがえる。
- 現場スタッフの反応はいかがですか。
このシステムの導入に対して否定的な意見もあり、現場に受け入れられるのかという不安もありました。しかし、導入してみると、この作業環境が当たり前になり、むしろ「こっちの現場にも欲しい!」という声があがるようになりました。
現在は当初の予定よりも範囲を広げて運用しています。また、他事業所でも同様の仕組みを導入しようという動きが出てきています。
更なるデジタル技術導入にむけて
- 今後はどんな展開を予定していますか。
- 現在、様々な業界で急激にデジタル化が進んでおり、弊社にもまだまだ導入の余地があると考えています。
- 以前から、社内システムに蓄積されたデータを活用して、業務効率化を図りたいと思っていましたが、活用しきれていないのが現状です。今回導入したシステムから得られるものも含めて、データの有効活用によって、更なる業務効率化と作業員の負担軽減を進めていきたいと考えています。
- デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。
-
新たなデジタル技術の導入に対しては現場から抵抗されることが多くあります。しかし、一度体験してみると、当初否定的だった従業員にも有用性が伝わり、別のデジタル技術の追加や展開規模の拡大への要望が加速的に出てくるようになります。
デジタル技術の導入推進役が熱意を持って取り組み、「まずは体験してもらおう」と一歩踏み出すことが重要だと思います。