AIの活用でスタッフの負担軽減
より質の高いサービスを目指して

株式会社e-MOTIONs(いきいき介護グループ)
代表取締役
渡部 真吉 わたなべ しんきち さん

株式会社e-MOTIONs(いきいき介護グループ)
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整骨院やパーソナルトレーニングジム、介護サービス事業所を運営する株式会社e-MOTIONs。

高齢者向けの運動機能向上を専門とするデイサービス「いきいき介護グループ」における、デジタル技術導入の取組やその効果について伺いました。

撮影するだけでAIが姿勢・歩行を評価

導入したデジタル技術について教えてください。

当グループでは、機能訓練プログラムの効果検証とプログラムの見直しのため、3か月に1回程度、サービス利用者の身体機能測定を行っています。

この身体機能測定において、数値化困難な動作をAIが評価・分析・記録するシステム「シセイカルテ」を導入しました。このシステムは、従来数値化が難しかった姿勢や歩行などをタブレットで撮影することで、AIが分析し数値化します。これにより、数値データと画像データを紐付けて長期的な変化を可視化できるため、より精度の高い効果検証が可能になりました。

「シセイカルテ」の分析画面。数値化の困難な項目の分析が可能

システム導入前は、どのような課題がありましたか。

以前はスタッフが測定を行い、結果をエクセルで手入力していたため、時間と手間がかかっていました。

また、機能訓練において、握力などの筋力や柔軟性などのほかに、日常動作である姿勢や歩行などの評価に重要性を感じていましたが、数値化が困難なため、評価するスタッフによってバラツキがあり、均一に評価する方法を模索していました。

所要時間が従来の10分の1に、職員の負担軽減に成功

導入前との違いは感じていますか。

AIが分析・評価を行うようになり、測定結果が均一化されました。また、撮影を行うだけで分析から記録まで自動で行われるため、測定・評価にかかる所要時間が以前と比べ10分の1ほどに削減され、スタッフの負担が大幅に軽減されました。スタッフは本来の業務である機能訓練の指導やプログラムの作成に集中できるようになっています。

また、以前はスタッフが10種類以上の項目を測定していましたが、姿勢等の分析・評価が可能になったことで、従来の測定項目の頻度を減らすなどの見直しに繋がっています。

さらに、静止画と動画で記録が残り、前後比較が容易になったことから、利用者の変化にも気づきやすくなりました。今まで数値化できなかった姿勢と歩行の分析・評価が可能になり、より効果的な機能訓練のプログラムを研究する一助にもなったほか、効果の可視化により他社との差別化にもつながっています。

測定の様子。撮影するだけで数値化・記録が完了する。

現場スタッフの反応はいかがですか。

測定の時間と手間が軽減されたことで、測定にかかる負担が大幅に軽くなったと喜ぶ声が上がっています。

また、測定結果はスタッフ間で共有できるのはもちろんのこと、ケアマネージャーや利用者の家族にも静止画つきのデータを提供できるようになったことから、「情報共有がしやすくなった」という声もありました。

導入にあたって工夫された点は何ですか。

このシステムを介護サービス事業所に導入した全国初の事例だったこともあり、スタッフが負担なく操作に慣れるよう、他社の製品との比較や試験導入を行いながら、実際の使い勝手についてベンダーと検討を重ね、操作方法や入力画面をできるだけシンプルなものにしました。

業界への周知を目指して

今後はどんな展開を予定していますか。

福祉・介護の領域は、デジタル化によって業務効率化の伸び幅のある業界だと思っています。機能回復を目的とした施設は県内にも多数ありますが、デジタル技術を用いて姿勢や歩行を数値化している施設は多くないと聞いています。当グループのように、デジタル技術によって機能訓練業務に集中できることや効果の可視化・数値化は、機能訓練の品質の向上につながり、更には利用者のQOL向上につながると考えます。

業界全体にデジタル化のメリットを横展開し、デジタル技術による業務効率化や効果の可視化により、機能訓練の品質を向上につなげるというサイクルを広めていきたいと思います。

デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様にメッセージをお願いします。

デジタル技術導入における手間やコスト面のハードルはあると思いますが、デジタル技術は必要不可欠な時代になってきました。デジタル化を行うと、業務効率化により本来の業務に集中できることに加え、データを活用することでサービスの質の向上や競争力強化が見込めます。

自社のサービスの中で、デジタル化すべきところとそうでないところを見極め、自社の強みを生かしながら、デジタル化を進めていくことが重要だと考えます。

実際に活用した支援制度(補助金など)

  • デジタル化トライアル事業費補助金
  • 企業内デジタル人材育成事業