デジタル技術を活用して
バックヤード業務を効率化
働きやすい職場づくりを目指して

社会福祉法人あけぼの会
入所事業部 部長
町田 大介 まちた だいすけ さん

社会福祉法人あけぼの会
(外部サイトに移動)
大仙市に拠点を置き、地域との共存を大切にしながら、介護、リハビリテーション、保育、メンタルクリニックなどの分野で様々な事業を展開する社会福祉法人あけぼの会。
働きやすい職場環境を整えるために実施した、デジタル技術によるバックヤード業務効率化の取組について伺いました。

アナログな管理手法に課題感、デジタル技術で効率化を図る

導入したデジタル技術について教えてください。

利用者様のケア記録を一元的に管理することが可能な介護記録システムや、タブレット端末で撮影するだけで荷物リストを自動で作成する持ち物チェックアプリなど、スタッフの負担軽減を目的にバックヤード業務の効率化を図っています。

また、介護サービスの品質向上に寄与する見守りシステムのほか、議事録作成や施設内の掲示物作成に生成AIを活用するなど、導入しているデジタル技術は多岐に渡ります。

介護記録システム。ケアの記録や予定が一元的に管理されている。

生成AIを使用して作成した掲示物。

デジタル技術導入前は、どのような課題がありましたか。

以前の管理体制下では、スタッフ間の情報共有や記録業務などに時間と労力を要していました。

例えば、健康管理や食事・排泄の記録は別々の用紙に手書きで記入していたため、記入内容が重複するなど、書類作成に手間がかかっていました。また、その記録をスタッフ全員に回覧していたため、情報共有に時間がかかっていたほか、利用者様が入退所する際の持ち物チェックでは、カメラで持ち物を撮影し、その情報を手書きで用紙に記入・印刷して保管するなど、作業工程が多く、時間外労働が発生することもありました。

夜間には、2時間おきに全室を定期巡回し、利用者様の様子を確認しています。夜勤スタッフは人数が少ないため業務負荷が大きいほか、利用者様の睡眠を妨げてしまうことも問題でした。

デジタル技術を導入したきっかけは何ですか。

今後、深刻な人手不足が予想されるなか、介護サービスの質を維持するためには、現在の業務を効率化し、生産性を向上させることが不可欠でした。また、スタッフからも「バックヤード業務にかかる時間を削減して、もっと利用者様のケアに時間を使いたい」との要望がありました。

効率化とスタッフの要望を実現するために、デジタル技術の導入を決めました。

業務時間が大幅に短縮!スタッフからも高評価

デジタル技術導入前との違いは感じていますか。。

デジタル技術の導入により、業務時間の短縮や介護サービスの品質向上など効果を実感しています。

介護記録システムの導入により、紙での管理をなくし記録はすべてシステムに入力するようにしました。同じ情報を重複して記入することがなくなり、記録にかかる時間が削減されました。また、パソコンやタブレット端末から情報が閲覧できるようになり、紙回覧の待ち時間もなくなりました。

さらに、持ち物チェックアプリにより、タブレット端末で撮影から記録まで完結するため、以前は30分以上かかっていた作業が、現在は10分以下で終了します。時間外労働で持ち物チェックを行うこともほとんどなくなりました。

そのほかにも、送迎計画を自動で作成する送迎支援システムの導入や、生成AIを活用した議事録や施設内の掲示物の作成により、業務にかかる時間を大幅に削減できました。

システム等導入により削減された業務時間。

見守りシステムではリアルタイムで利用者様の状態を確認することができるほか、転倒リスクの高い利用者様がトイレなどで離床した際には、スタッフのスマートフォンに通知され、サポートに駆けつけることができることから、転倒事故の減少や、睡眠のデータを利用した投薬量の改善など、よりよいサービスの提供につながっています。

睡眠・離床などの様子を可視化した見守りシステム画面。

職員のスマートフォンへ通知されることで、すぐに部屋まで駆け付けることが可能。

そのほかにも、スタッフ間でスムーズな情報共有ができるよう、チャットツールを導入しました。スタッフだけでなく利用者様の家族に連絡することもでき、緊急性のない連絡は電話ではなくチャットツールを使用するようにしています。利用者様の家族が仕事中で電話が繋がらず、何度も電話をかけ直すということがなくなり、スタッフの負担が軽減しました。利用者様の家族からも、いつでも連絡事項が確認できるようになり便利になったと好評です。

現場スタッフの反応はいかがですか。

記録や情報共有等バックヤード業務の時間が短縮されたことで、利用者様の介護やケアに集中できるようになったと喜ばれました。スタッフへの「当法人のよいところは?」というアンケートでは、「DX・ICTの活用」が1位をとるなど、デジタル技術の活用が高く評価されています。中には「デジタル技術を活用していることが求人応募の決め手だった」と話す若手スタッフもいました。

導入に当たって工夫された点は何ですか。

各事業からデジタル技術に関心のある人材を集めたDXチームで、導入前に実証実験を行った点です。

当法人ではデジタル技術を導入する際、DXチームで機器の選定や運用方針の策定、実証実験や導入後の操作指導を行っています。導入当初はデジタル技術や新しい業務フローに慣れず、一時的に業務負荷が増えることに抵抗感のあるスタッフもいましたが、実証結果をもとに業務負荷が軽減されることを伝えながら、丁寧に操作指導を行いました。マニュアル動画の作成や習熟度に合わせたフォローも行った結果、今ではほとんどのスタッフがデジタル技術を活用しています。

デジタル化を推進しようと決めた当初、秋田県内では介護サービス事業者のデジタル技術の活用事例はほとんどありませんでした。県外でデジタル技術を活用している事業所への視察や展示会などを通して、積極的に情報収集を行いながらデジタル化を進めました。

多様な人材が活躍できる職場づくりを目指して

今後はどんな展開を予定していますか。

外国人材の採用を予定しているため、音声入力や多言語翻訳機能のあるシステムなど、外国人材に対応した環境の整備を検討しています。

当法人は「スタッフが物心共に幸せな法人になる」をビジョンに、働きやすい職場作りに取り組んでおり、「秋田県介護サービス事業所認証評価制度(※)」における認証も取得しています。デジタル技術の導入は手段のひとつとして、多様な人材が働きやすい職場づくりへ引き続き取り組んでいく予定です。

※秋田県介護サービス事業所認証評価制度・・・職員の処遇改善や人材育成等を積極的に実施する介護サービス事業者を、県が一定の基準に基づいて、評価・認証する制度。詳しくは画像をクリック▼

デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様にメッセージをお願いします。

デジタル技術を導入し、確かな業務効率化と生産性の向上を感じています。

デジタル技術を導入する際は、一時的に業務負荷が大きくなってしまうこともありましたが、あきらめずに「今の業務」より「未来の業務」をイメージし実践してきました。介護サービス事業において、情報共有や記録などのバックヤード業務は特に効率化を図りやすいと思います。

費用面でも補助金や助成金を活用することでコストを軽減できるため、支援制度を活用しながらデジタル技術の導入を検討することもおすすめいたします。