デジタル技術の活用で業務効率化・負担軽減
県内建設事業者初のDX認定を取得
株式会社瀧神巧業
DX推進部
高橋 周平
さん
株式会社瀧神巧業(外部サイトに移動)
仙北市で鐵構事業、建設事業、ドローンスクール運営事業を展開する株式会社瀧神巧業は、秋田県の建設事業者として初のDX認定を取得しました。同社のデジタル技術導入後の効果やDX認定取得への取組について、お話を伺いました。
他社事例を参考に、自社の現状分析を行う
- 導入したデジタル技術について教えてください。
弊社では、クラウド型業務アプリ作成ツールを活用し、管理業務において作業負担の軽減やコスト削減を実現しました。このツールは、プログラミングの知識がなくても業務アプリを作成できるノーコードツールで、自社の業務に合ったアプリを自ら作成することができます。その他にも、社内情報を一元的に集約しているポータルサイトを構築しました。
また、ドローンや3D設計ツールを活用することで測量業務や設計業務の負担軽減・効率化を行うほか、ドローンスクールの運営も行っています。
- デジタル技術を導入したきっかけは何ですか。
他社のデジタル技術活用事例を知り、自社の現状を見直したことがきっかけです。時間外労働の多さや事務作業における重複入力の手間、紙などのアナログ管理が中心であることが弊社の課題だと認識しました。これらの課題を解決するため、デジタル技術の導入を決めました。
- 導入に当たり、何か課題はありましたか。
社内にデジタル技術に詳しい人材がおらず、ツールの選定や効果の検証について苦労しました。他社事例の分析や展示会への参加、私自身もDX推進アドバイザーの資格を取得するなど、外部からの知識の習得を積極的に行ったほか、1年ほど効果検証を行い、費用対効果を分析しました。
また、いまだデジタル技術の導入に抵抗感のある社員もいます。そのため、デジタル技術の導入後も以前のやり方に一部戻すなど、柔軟な対応を行いました。DX推進部長の佐藤も積極的にデジタル技術を使用し、ベテラン社員に利便性を伝えながら、少しずつDXを進めていきました。
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自社で作成した業務アプリを中心に、デジタル技術で業務改革
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- 業務アプリ作成前との違いは感じていますか。
クラウド型業務アプリ作成サービスを活用し、自社専用のアプリを作成し、事務作業において効率化やコスト削減、負担軽減などを実現しました。
■物件管理アプリ
以前は多数のフォーマットに記録する必要があり、最大で5回、同じ内容を入力していました。現在はアプリに1度入力することで他のフォーマットにも入力結果が反映されるため、重複して入力することがなくなり、事務作業にかかる時間が80%ほど削減されました。
■名刺作成アプリ
外部委託することなく自社内で名刺作成が可能になり、かかる費用が1/10になるなど、コストが軽減されました。
■案件管理アプリ
以前は社内会議で共有・議事録を作成していましたが、顧客との接触記録をアプリに蓄積できるようにしました。情報共有にかかる時間が短縮され、接触記録を探しやすくなりました。
■実行予算書作成アプリ
以前はフォーマットが統一されておらず、作成者も確認者も負担が大きいことが問題でした。現在はアプリに必要な数字を打ち込むことで初心者でも簡単に作成できるようにしました。計算ミスもなくなり、社内の稟議や他のアプリとの連動を可能にしたことで、業務が効率化されました。
■備品注文アプリ
以前は備品がなくなりそうになると管理者にチャットツールで報告していたため、とりまとめに苦労していました。現在は現場にQRコードを設置し、作業者はその場で注文ができ、管理者にとっても確認の負担が軽減しました。このアプリはアカウントがなくても注文ができるため、外部委託のスタッフとの作業時にも使い勝手がよく、好評です。
■安全パトロールアプリ
以前は紙のフォーマットを現場に持参し、手書きで記入、その後に社内でスキャンしPDFとして保存していたため、手間がかかっていました。現在は、現場からスマートフォンからアプリへ入力し、すぐにPDF化することができます。

実際にアプリを使用して業務を行っている様子。
- そのほかのデジタル技術導入の効果はいかがですか。
ポータルサイト構築により、勤怠や日報、給料等の社内情報がポータルサイトに集約されたため、必要な情報を探しやすくなりました。特に新入社員から好評を得ています。社内カレンダーや掲示板もポータルサイトでの掲載・閲覧を可能にしたため、紙で印刷・回覧の必要がなくなり、ペーパーレスにもつながっています。
また、ドローンを活用して初期調査を効率化し、3Dデータとして確認が可能なため、繰り返し現場へ訪問する必要がなくなり、調査にかかる時間やそれに伴う人件費が削減されました。3Dデータは視覚的に確認しやすいため、顧客への営業時に「わかりやすい」と好評です。また、ドローンは現在様々な分野で注目されており、弊社のドローンスクールにもスマート農業や建設業へのドローン活用を目的に、幅広い年齢層の受講者が在籍しています。
ドローンによる初期調査により3Dデータ化が可能。様々な角度から現場の情報が確認できる。
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DX体制づくりからDX認定へ、社内の意識も変化
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DX認定までの道のりついて教えてください。
社内のデジタルツールの浸透のきっかけや会社のPRにもなると考え、DX認定を目指しました。DX認定は「DXの準備ができている状態(DX-Ready)」の事業者が認定されるため、社内へのDXを推進しながらも、「DX体制づくり」に注力しました。現状の課題の洗い出しや社内のDX部署の設置、DXによる業務効率化の目標値の設定、4、5年後までのDXシナリオ等の作成をデジタル技術の導入と平行して行った結果、2024年5月にDX認定を取得することができました。
DX認定制度については▶こちら(経済産業省のウェブサイトに遷移します)
- DX認定後、社内の雰囲気はいかがですか。
当初デジタル技術の導入に反対していた社員も、認定取得後は協力的な姿勢がみられるようになり、社内でデジタル技術を使ってみようという機運が高まったと感じます。
最近では、現場の社員自らアプリを開発することもあります。弊社では、部署ごとにデジタル化した事例や業務効率化の取組を発表し、社長が表彰を行う「DX大会」を開催しています。案件管理アプリは、営業部の社員が「このようなアプリがあったら便利だな」という発想から自らアプリを制作し、DX大会で優秀賞を取得した事例です。
そのほかにも、チームごとに業務目標をたて、達成のためにDXを含めた業務改善計画を設定・実行し、月ごとに実績評価を行っています。
- 今後はどんな展開を予定していますか。
「スマートフォン一つで業務を完遂する」を目標に、社内DXを益々推進する予定です。いずれは全社員が業務アプリを作成できるよう、社内のデジタル人材の教育に力を入れていきます。
そのほかにも、DX認定を取得すると、設備投資等に必要な資金について金利優遇を受けること等ができます。今後はそれらを活用しながら、生成AI等の新たなデジタル技術も取り入れ、更なる業務効率化を目指します。
また、ドローンを活用した鳥獣害調査や融雪などの実証実験を進め、様々な社会課題の解決にも貢献したいです。
- デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。
弊社は、これまで外部委託等することなく、DXに取り組んできました。他社の成功事例を参考にし、積極的にDXへ投資を行ってきた結果、DX認定を取得することができました。
DX認定は「DXの準備ができている状態」であることを証明するものです。認定取得の要件を確認し、「体制づくり」や「目標設定」に取り組むことをおすすめします。
まずは、他社事例を参考に、真似をしてみることから始めてみてください。様々なサービスを試し、「自社が理解し、使いこなせる」ツールを導入することがポイントだと思います。