情報共有アプリ導入で業務改善!
住宅メーカーの事例
株式会社ドリームビルド
取締役営業部長
加賀谷健一
さん
株式会社ドリームビルド
「もう導入前には戻りたくないですね」情報共有の課題をDXで改善!
秋田市の住宅メーカーが取り入れた業界に特化した優れものアプリとは
本項では小規模事業者(※1)がDXの導入で好影響のあった事例をシリーズで紹介していきます。最初に紹介するのは秋田市浜田の住宅メーカードリームビルド。96年3月創業で従業員数は10名(25年10月1日時点)。寒暖差の大きい過酷な自然環境の秋田で、耐久性に優れ、木のぬくもりを活かした高気密・高断熱の住宅設計を得意としています。


住宅造りは出入り業者が多く情報の共有に苦労…
基礎工事に大工・左官・サッシ・電気・内装・設備にシーリング。仮設トイレにゴミの処理まで。住宅建設の現場はとにかくかかわる業者が多く、その業者も案件ごとに異なります。設計の小さな変更など共有すべき情報の更新も日常的。
また、社内においても、図面は設計、工事写真は工務、顧客管理は営業と担当が別。土日は工事現場が休みになる一方、水曜、木曜が休みの営業は週末が書き入れ時で、担当者がいなければ欲しい情報の回答に時間を要するなど、課題山積でした。

出会いは社員旅行 社長の熱意が社員を動かすも…導入までの紆余曲折
2018年ドリームビルド恒例の社員旅行、向かったのは業界関係者が集う年に1度の見本市「ジャパンホームショー」。ここで当時としては革新的な「アプリで現場を管理」をうたい文句に掲げる情報共有アプリのブースに出会います。
社員が総じて「こんなものもあるんだ」といった薄い反応を見せる中、佐々木直人社長だけは目の色が違っていました。

「あれがどうなった、これがどうなったと現場に走っていく社員の時間的なロスを日常的にかなり見ていましたし、情報共有に課題がありましたから。」
導入すれば絶対に効率もよくなり、人為的なミスも減らすことができる。
秋田に帰ってからも佐々木社長は社員にこのアプリの導入を猛プッシュしました。
しかし社員からは…
『「いや、そんなのできるわけないじゃない」という反応が一番でしたね。この業界、年齢が高い人が多い。そういう人が携帯やiPad、ましてやアプリを使いこなせるの?と』
それでも、社長の導入への歩みは止まりませんでした。まずはメーカーにデモを依頼、実際にアプリを試してみたところ、使い勝手の良さから社員の気持ちにも変化が現れます。こうして、会社一丸で導入の方向へと進み始めました。
続いて行ったのが関連業者の説得です。およそ30人を会社近くの公共施設に招いて説明会を開催しました。ここでも、ベテランの職人の反発などがあったといいますが、社員の積極的な働きかけや、すでにアプリの存在を知っている参加した業者の人たちの後押しも手伝って、納得してもらうことができたそうです。
2019年。ドリームビルドは県内の他社にさきがけてこの情報共有アプリを導入しました。
導入した情報共有アプリの特徴は?




取締役営業部長の加賀谷健一さん
「このアプリの特徴は、案件=現場ごとにフォルダーが分けられて、見られる権限もそれぞれで変えることができます。」「細かい図面の修正が多いんですけど、情報の更新通知はそのたびに来るので見逃しを防ぐことができます。」「ほかに、すごくいいなぁと思っているのが黒板撮影機能なんですよ。」

画面にデジタルの黒板を呼び出して撮影ができる
建築現場では、基礎工事の鉄筋や、工事中に隠れてしまう断熱材・筋交いなどの写真を都度情報を記載した黒板を掲げて撮影・保存する必要が法律で定められていて、建築確認の検査には写真の提出が求められます。
それ以外にも、補助金を申請するために、ボイラーやサッシの性能ラベルといった異なる場面の写真を黒板と共に撮影する必要があり、その数は少なくとも50枚以上にのぼるといいます。アプリの導入前は、2人以上が同じ場所に黒板を持っていき、1人が黒板を倒れないようにもって、もう1人がその人を撮影するなどの手間がかかっていました。

会社倉庫から昔使っていた黒板を引っ張り出して撮影してもらいました
加賀谷さん「1人で撮影したこともあったんですが、黒板が風で倒れたり、手が真っ白になったり大変でした。また、デジカメを使っていた時代は広角が撮れないので、建物の全体を画面に入れるために道路を渡らなければならないなんて苦労がありました。アプリだと、いつでも画面の好きなところに黒板を出すことができるので、1人での撮影が可能になりましたし、スマートフォンは広角の撮影ができるので、とても便利になりました。」「黒板を持ってきていないときに限って絶好の撮影チャンスで、慌てて会社に取りにもどったことも数えきれないですし、黒板撮影にまつわる住宅メーカーのエピソードはあげたらきりがないですね。」

もうこの時代には戻りたくないと言いながら黒板に文字を書き入れる現場監督
このほかにも、法律で保存が定められた物件ごとの関係書類も、アプリのクラウド上に格納することができるため、会社の倉庫や、自社のホームページの容量を圧迫することがありません。
お客様にとっては一生に一度…だから工事に問題を起こしてはならない
加賀谷さん
「扱っている金額が大きいので、1つのミスが大きな損失につながりかねない。お客様にとっては一生に一度の家なので、工事中に問題が発生しないようにしなければならない。スムーズに現場を運ぶことが、会社の業績的にも、お客様の満足度的にも必要なことだと思います。」「デジタル化というのは避けては通れないと、導入前も思ってはいたんですよ。ただ、少なからず費用(※2)はかかる。でも、やってみれば、費用もかかっているし、真剣に取り組むと思うんですよ。いざ慣れてみると、かけた時間・コスト以上に業務は効率化しますし、ミスが防げる。結果お客様にも満足してくれいただけるので、本当にやってよかったなと思います」

加賀谷さんをはじめ、ドリームビルドの社員の皆様が「もう、アプリ導入前には戻れない」と口々に仰っていたのが印象的でした。
ここで紹介したのは、住宅メーカーに特化した情報共有アプリですが、他にも無料のものも含めて様々なタイプの情報共有のデジタルツールが存在しています。身近な相談窓口などを活用し、ご自身の仕事の役に立つものを探してみてはいかがでしょうか?

県では、県内の小規模事業者の皆様を対象に、デジタル化(DX)推進に向けた取り組みを支援しています。
『デジタル化(DX)って、どう始めたらいいの?』
『他の会社はどうやって成功しているの?』
そんな疑問をお持ちの事業者様向けに、県内でデジタル技術を効果的に活用している好事例を紹介します。
これらの事例を参考に、ビジネスのヒントにしていただき、「自分の店(会社)でもこんな風にできるかも!」と具体的なイメージを持っていただけることを目指しています。
【ご注意ください】
特定の会社のサービスや製品をお勧めするものではありません。
デジタル技術を取り入れる場合は、ご自身で内容をよく確かめて、慎重に検討してください。
※1 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)に基づき、一般的に卸売業、小売業、サービス業では「常時使用する従業員の数が5人以下」、製造業、建設業、運輸業等では「常時使用する従業員の数が20人以下」の企業を指す。
※2 ドリームビルドの場合、アプリ使用料は月額数万円