ECサイトで目指せ海外展開!
呉服店3代目の挑戦

渡修呉服店/合同会社WATA
代表社員
渡部仁 さん

渡修呉服店/合同会社WATA

  

「秋田オリジナルの商品を海外へ」地元の商工会議所へのデジタル化相談でECサイトを開設!歴史ある呉服店3代目の挑戦

本項では小規模事業者(※1)によるDX導入の好事例をシリーズで紹介していきます。

 渡修呉服店は初代の渡部修造さんが1948年、秋田市のJR土崎駅前に創業。

現在は土崎港中央の四つ谷街道沿いに店を構えています(1969年移転)。切り盛りするのは2代目の和雄さんと重子さん夫婦。

そこに自動車ディーラーや住宅設備機器メーカーでのサラリーマン生活を経て、2025年1月、3代目の仁さんが経営に参加しました

(仁さんは3月に合同会社WATAを設立・代表社員に就任)。

  

扱う商品には自信あり、口コミでの評判も上々。でも先行きは…

地元土崎港曳山まつりや、秋田竿燈まつりなどの衣装や用品が、渡修呉服店のこれまでの主力商品でした。仁さんは、扱う商品や、両親の目利きには自信を持っていますが、一方で、不安を抱えていたといいます。

 

渡部仁さん「いいものを作って売っている自信はあります。口コミでも“品物はいいね”って広まっている実感はあるんですが、若年層への広がりが弱い。」「秋田だけで商売していると、いずれ先行きは明るくないかなと思っていて…」

少子高齢化で、まつりや伝統行事の継続にも苦労がついて回る秋田県。まつり用品だけで店を盛り上げていくには、早い段階で限界が来ると感じていました。

 

きっかけは経営相談 コンサルタントが無償で伴走支援

危機感を抱いた渡部さんが向かったのは、地元の商工会議所でした。窓口で対応にあたった藤原俊哉さんに、秋田商工会議所の相談体制について聞きました。

藤原さん「当所では、経営者の皆様の課題解決に向け、様々な相談窓口を設けております。令和6年6月には、新たに“デジタル化相談窓口”を開設。渡部さんのご相談もここで対応しました。」「相談いただく事業者からは、デジタル化の重要性を感じていても“何から始めればいいかわからない”“デジタルツールの選び方がわからない”“費用に見合った効果が得られるか不安だ”といった悩みが寄せられています。」 

秋田商工会議所では、こうしたデジタル化の相談に対して、経営指導員がまず話を聞き、専門的な知識が必要な場合は、無料で専門家を派遣するなど、伴走支援を行っているということです。渡部さんの相談は、デジタルマーケティングを得意とするコンサルタントの吉野智人さんに引き継がれました。

 

吉野さん「渡部さんと打ち合わせする中で、将来的な目標として、外国の方に向けてオリジナル商品を販売したいという構想があったんですね。ということで、ECサイトの開設。そのECサイトについても、国外の販売に強みを持つものを使っていきましょうとアドバイスさせてもらいました」 

渡部さんはクルーズ船の来航時に、港で対面販売をした経験が何度かあり、外国から来た人の商品への反応に手応えを感じていたといいます。吉野さんは、渡部さんと話をする中で、そうした細かな情報や要望をきっちりと把握し、ECサイトを使った商品のオンライン販売へ導くなど、課題解決に向けて寄り添っていきました。

こうして2025年5月、渡修はECサイトを開設しました。渡部さんは今、日々届く反応から、少しずつ手ごたえを感じています。 

導入したECサイトの特徴と選定の経緯

吉野さんによると、ECサイトは一度作成すると、新しいものを再構築するのに手間がかかるため、小規模事業者にとっては、導入に慎重な判断を必要とするそうです。

 様々な種類があり、それぞれに特徴を持つECサイトの中から、吉野さんが渡部さんに導入を勧めたのは、海外への発送や、海外での決済サービスが充実しているものでした。 

 

 吉野さん「導入したサイトは、横並びにならず、個性的なものにカスタマイズしやすいんですね。加えて、ノーコードなので、プログラミングの専門知識がなくても、自分の手で改修が比較的簡単にできます。月5,000円弱という利用料も、負担がそれほど大きくない。このあたりが大きな理由でした。」

導入したサイトには、国外ではその国の言葉に表記が自動で変わるという特徴があります。また、渡部さんはサイト内でブログを作って情報発信できることも気に入っていると話していました。 

メイドイン秋田を世界へ!

目玉となる新商品の開発も必要だと考えていた渡部さん。秋田を舞台にマーチングに青春をかける高校生を題材にした漫画「みかづきマーチ」(双葉社刊)の作者で、秋田県出身の漫画家山田はまちさんへ協業を依頼し、快諾を得ました。早速「みかづきマーチ」を象徴する扉絵と、土崎港曳山まつりを題材に山田さんが書き下ろした絵をプリントしたTシャツ、手ぬぐいを作成し、話題を呼んでいるそうです。

また、大潟村産の藍で染めたTシャツや、秋田の伝統的な絹織物「秋田八丈」をポケットにあしらったTシャツなど、世界で勝負できるメイドイン秋田の製品を開発し、ECサイトで世界へ展開しようと考えています。

 

「新しい取り組みをしてから、若い人の出入り(来客)が増えてきているので、気持ちが明るくなっています」という2代目の和雄さんと重子さんご夫婦のお話が印象的でした。

   

 秋田県内DX支援の現状と今後

渡修のECサイト導入を伴走支援したコンサルタントの吉野智人さんは、デジタル化に関連した小規模事業者の経営相談は近年増加していると話します。

 

その上で、課題については…

 

「小規模事業者の方々は人・物・金の余裕がない上に、日々こなす業務がとても多いんですね。ですから、非日常のプラスアルファが難しい。また、デジタルにアレルギーを持っている経営者が多いので、ハードルが高いと感じている事業者がほとんどです。逆に、タイミングとやる気がかみ合えば簡単にやれるし、壁は思っているよりも低い。いざ動き出すと見えてくる景色が変わってくるということを知ってほしい。」と話します。

 

ご紹介した渡部さんのように、身近な相談窓口を探し、経営相談をするところから始めてみてはいかがでしょうか?

 

県では、県内の小規模事業者の皆様を対象に、デジタル化(DX)推進に向けた取り組みを支援しています

『デジタル化(DX)って、どう始めたらいいの?』『他の会社はどうやって成功しているの?』

そんな疑問をお持ちの事業者様向けに、県内でデジタル技術を効果的に活用している好事例を紹介します。

 

これらの事例を参考に、ビジネスのヒントにしていただき、「自分の店(会社)でもこんな風にできるかも!」と具体的なイメージを持っていただけることを目指しています。

 

【ご注意ください】

特定の会社のサービスや製品をお勧めするものではありません。

デジタル技術を取り入れる場合は、ご自身で内容をよく確かめて、慎重に検討してください。

※1 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)に基づき、一般的に卸売業、小売業、サービス業では「常時使用する従業員の数が5人以下」、製造業、建設業、運輸業等では「常時使用する従業員の数が20人以下」の企業を指す。