受発注システムにより脱アナログ管理
現場と共に一からシステムを開発

山瀬青果株式会社
専務取締役
橋本 一昭 はしもと かずあき さん

山瀬青果株式会社
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秋田市地方卸売市場を拠点に、半世紀以上にわたり青果物仲卸業を行う山瀬青果株式会社。生産者と消費者を結ぶ「食のインフラ」としての仕入れ販売だけでなく、秋田県産青果のオリジナルブランド開発やイベント企画にも注力しています。同社が地元ICT企業と共に開発した受発注システムの運用効果と今後の展開について伺いました。

アナログ管理の限界と自社開発システム

導入したデジタル技術について教えてください。

自社の業務に合わせた受発注システムを地元のICT企業と開発し、運用しています。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットからもシステムへ入力できるようになっているため、現場から商品を確認しながら受発注作業が可能です。配送業務においても、システムから商品の個数の確認や配送状況の入力ができるため、リアルタイムで配送進捗も確認できます。

また、取引先から送付されたデータをシステムに取り込むこともできるほか、システム等を導入していない取引先には、弊社システムから出力された2次元コードを送付し、必要な商品・数量をスマートフォン等から発注してもらうといった運用も行っています。

システムを活用しながら作業を行う様子。

以前の管理体制では、どのような課題があったのでしょうか。

以前は紙の伝票を使用して受発注を管理していたため、アナログならではの課題が多くありました。紙伝票では、記入者によっては文字に癖があり読み取りにくく、事務所から現場の担当者まで確認に行く作業が頻繁に発生していたことが大きな課題でした。そのほかにも、書き間違い・読み間違い等のミスもしばしば発生していました。

また、現場で書いた伝票を事務所に持ち帰り、それを事務スタッフがパソコンに再入力するという二重の作業が必要だったほか、再入力作業による転記ミスもありました。

さらに、伝票そのものを紛失してしまうリスクに加え、営業スタッフと事務スタッフの間で注文内容の認識が食い違ってしまうといったトラブルが発生してしまうことも問題でした。

導入に当たり、なにか課題はありましたか。

長年運用してきた紙伝票からデジタルへ移行することに対するスタッフの抵抗感が課題でした。特にベテランスタッフの間では、これまでの業務フローを大きく変えることに対して強い不安や反発があり、全員が一斉にシステムを使いこなすのは難しいと考えていました。

また、既存のシステムの導入も検討しましたが、弊社には不要な機能が多く、複雑なシステムはかえって現場の負担を増やし、デジタル化への抵抗感を大きくするのではないかという懸念がありました。

そこで、本当に弊社が必要とする機能だけに絞り込み、誰でも迷わず直感的に操作できるシステムを一から開発することを決意しました。

紙とデジタルの併用でスムーズな導入に成功

導入前との違いは感じていますか。

システム導入により、紙伝票ならではの確認作業や書き間違いによるミスが激減しています。以前は、頻繁にあった事務スタッフから現場の担当者への確認作業が、現在はほとんどなくなりました。

事務スタッフの受発注業務にかかる時間は、以前と比較して1日あたり約2時間半程度は削減されました。紙伝票を確認してシステムに再入力する作業がほぼ不要になったため、空いた時間で他のスタッフを手伝うなど、限られた時間・労力を効率的に活用しています。受発注システム導入により事務スタッフの業務フローが大きく変わったため、従来の事務作業に代わり現在ではSNSを活用した情報発信や営業の側面支援などを行い、企業価値やブランド力の向上につながる業務を行っています。

また、手書き作業やFAXのやり取りがなくなったことで、営業スタッフにおいても作業にかかる時間が1日当たり1時間以上削減され、お客様と向き合うことができるようになりました。営業スタッフ同士が各自の端末を見ながら確認作業を行うなど、情報共有の正確性・スピードが向上したことも、デジタル化の大きなメリットだと思います。

そのほかにも、商品の到着時刻について取引先のスーパー等から質問された際、以前はドライバーまで状況を確認する必要がありましたが、現在はリアルタイムで配送状況が確認できるため、すぐに対応できるようになりました。

導入に当たり、工夫された点は何ですか。

導入後、業務フローをすべて刷新するのではなく、システム・紙伝票での受発注を併用した点です。導入当初は社内全体に強制するのではなく、まずはスマートフォンの操作に慣れている若手やデジタル技術に抵抗のないスタッフから使用を開始し、効果を実感してもらいました。システムを活用して効率的に作業を終えるスタッフの様子を見て、デジタルに抵抗のあったスタッフも「自分もシステムを使ってみたい」と思うようになり、少しずつシステムの運用が広がっていきました。現在では8割ほどのスタッフがシステムを活用しています。

また、現場の声を拾いながら開発を進めたことも、システムの浸透につながったと思います。現場のスタッフに実際に触ってもらいながら、入力フローや上から順番に押していけばいいボタンの配置など、具体的な要望をその都度システムに反映させました。その結果、弊社

の業務フローに沿った、使い勝手のよいシステムを開発することができました。

現場スタッフの反応はいかがですか。
導入当初はベテランスタッフを中心に、不安の声もありました。しかし、実際に使い始めると手書きよりも楽に入力できる点や、確認作業が不要になったことで、営業・事務スタッフ共に業務負荷が減り、本来の業務に集中しやすくなったという声が多く上がっています。
ホームページもこだわって制作されたそうですが、効果はいかがですか。
人材採用の面において、効果を実感しています。温かみを感じる色使いやデザインにこだわったほか、AI等を使用せず実際の社員の写真や社員のコメントを掲載することで、職場の雰囲気が伝わるようなホームページを意識しました。その結果、最近はホームページを見て入社を志望してくる若手の方も増えており、最近は安定的に人材を採用できています。

  

山瀬青果株式会社のホームページ。求職者に会社の雰囲気が伝わるようなつくりにこだわっている。

現場の声を聞き「共に育てる」デジタル化が重要

今後はどのような展開を予定していますか。

今回導入した受発注システムを土台として、受注データの活用や、生成AI等を活用して需要予測や在庫管理の精度をこれまで以上に高めていきたいと考えています。いずれは、倉庫内にロボット等を導入して、業務全体の作業負荷の軽減や効率化を構想しています。

また、私自身もこれから本格的にAIの勉強を始める予定です。

業界の大きな課題である「早朝勤務」の負担も、デジタル技術を活用して改善できればと考えています。現在のシステム導入のみならず、多様なデジタル技術を組み合わせて更なる業務効率化を行い、業界全体へ波及できればと思います。

デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。

デジタル化は一気に進めようとすると負担が大きく、現場の不安も生まれがちです。弊社では、得意な人から少しずつ始め、互いに教え合う形で浸透させたことで、無理なく効果を実感できました。いきなり完成品をイメージするのではなく、まずは不完全を前提とした小さな一歩から取り組み、現場の声を聞きながら「共に育てていく」という感覚で進めることが成功につながると感じています。

システム導入を支援した方からのメッセージ

橋本 一昭

アイティーフロント株式会社
代表取締役
青木 一幸 さん

市場仲卸という「セリ」や「複写紙伝票」の文化が根強い業界のなかで、IT・DX化をどこから進めるべきかをご検討をいただきました。
山瀬青果株式会社様では経営層が積極的に要件定義や仕様テストにもご参画いただけたことで、よりスムーズなプロジェクト運営ができました。
未来の市場仲卸として山瀬青果部式会社様がどうあるべきかを見据え、それを経営と現場と共有・共感しながら、IT・DX化をいかに社内に定着させるかを思い描きながらのプロジェクト運営であったと思います。
今後はAIの実装も含めた課題解決のご支援をさせていただきます。

アイティーフロント株式会社
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実際に活用した支援制度(補助金など)

  • 地域密着型DX支援事業