デジタル技術の導入によりバックオフィス業務を効率化
競争力強化・企業価値の向上を目指したDX
株式会社稲庭うどん小川
専務取締役
小川 選子
さん
株式会社稲庭うどん小川(外部サイトに移動)
「属人的業務」と「二重入力」の解消を目指し、バックオフィス業務を改善
- 導入したデジタル技術について教えてください。
弊社では、勤怠管理、会計、販売・顧客管理、電子請求等のバックオフィス業務を効率化するシステムを複数導入しました。
勤怠管理では、紙のタイムカードを廃止し、職員のスマートフォンで打刻ができるシステムを導入しました。システムに各職員の勤怠記録がデータとして集約され、ボタン一つで給与計算が可能です。
会計業務では、データ連携機能を持つクラウド型のシステムを導入しました。未入金情報等をリアルタイムで確認できるようになったほか、法人顧客・個人顧客の会計情報を一元管理できるため、二重入力の手間やミスが大幅に削減されました。
そのほかにも、電子請求システムと、販売・顧客情報管理システムを最近導入し、これから本格運用する予定です。
電子請求システムは、紙を印刷して封筒に入れ、郵送するという一連の作業が不要になり、発行から送付までを画面上ですぐに完結できるようになっています。紙ならではのアナログ作業が軽減できるのを期待しています。
さらに、販売や顧客情報の管理には、営業活動の記録や受注、在庫、出荷までをまとめて管理できるシステムを取り入れました。法人・個人の全顧客情報を一元で管理できるクラウドシステムで、スマートフォン等の端末があれば出先からでも最新の情報にアクセス可能です。

勤怠管理システムでは社員自らのスマートフォンで打刻を行う。
早朝出勤や残業の計算の煩雑さが解消された。
- デジタル技術の導入前は、どのような課題があったのでしょうか。
以前は「二重入力」と「属人的な業務フロー」が最大の課題でした。例えば勤怠管理では、3か所の工場から紙のタイムカードを回収し、60名分の勤怠記録を電卓で手計算して給与システムに再入力していました。私自身、海外出張が多いため、事務所にいる間は時間に追われながら作業を行うことが多々ありました。
営業面でも、展示会での商談内容を担当者ごとにエクセルで管理していたため、情報の共有が遅れ、タイムリーな対応が困難な状況でした。
- デジタル技術を導入したきっかけは何ですか。
海外市場での売上拡大という目標を達成するため、生産量の向上と業務効率化が必須となったことが大きな理由です。加えて、海外市場において顧客獲得のためには、タイムリーな顧客対応や社内での情報共有がより重要になると考えました。
また、県の「デジタルを活用した食のリーディングカンパニー育成支援事業」の要件が「事業経費の10%以上をAI、IoTなどのデジタル技術導入に投資すること」であったことも、後押しとなりました。私自身、デジタル技術に対して最初は抵抗感がありましたが、補助事業のおかげで一歩踏み出すことができたと思います。
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デジタル技術により出先からでも事務作業・情報共有が可能に
効率化により生まれた余力は企業価値を高めるプロジェクトへ投入
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- 導入前との違いは感じていますか。
導入前と比較して、データがクラウド上にあることや情報が一元化されたことにより、バックオフィス業務における二重入力の手間やミスが削減されたほか、業務にかかる時間が短縮されるなど、大幅に効率化しました。
勤怠管理システムにより、給与計算にかかる時間が大幅に削減されました。以前は、各工場からタイムカードを収集し、エクセルと電卓を使用して手計算を行っており、1日半から2日ほどかかっていましたが、現在はワンクリックで給与計算が完了します。手計算による計算ミスや転記ミスといった人的ミスもゼロになり、正確性も向上しています。給与明細も電子化して社員のスマホに届くようになったため、紙を配る手間もなくなりました。また、クラウドシステムのため、場所を選ばずに仕事ができるようになったことも大きな違いです。
会計システムにより、入金情報が社員と共有可能になり、情報の見える化が進んだことで、担当者しか分からないという「属人的な業務」が解消されました。そのほかにも、法人顧客・個人顧客の会計情報が一元化されたため、二重入力の手間やそれに伴う転記ミス等も削減されました。
顧客管理システムにより、顧客情報が一元化されたことで、担当外の顧客情報も確認できるようになりました。発送状況や以前の商談の情報等、以前は各担当者にしか分からない情報に、だれでもアクセスできるため、迅速な顧客対応が可能となり顧客満足度の向上にもつながっています。
そのほかにも、電子請求システムは導入したばかりですが、印刷・郵送といった手間がなくなり、時間と手間、郵送コストが削減されています。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応も簡単になりました。
導入前はデジタル技術に対する抵抗感や不安感がありましたが、最近のデジタル技術は誰でも簡単に操作できるよう工夫されており、現在ではむしろ「もっとはやく導入すれば良かった」と思うほどに業務効率化を実感しています。何より、常に時間に追われていた状態から解放され、気持ちに余裕が生まれたことが最大のメリットだと感じています。業務効率化により浮いた時間は、現在進行中の新工場建設プロジェクトなど、さらに生産性や付加価値を高める業務に当てることができています。
情報が一元化され、業務のロスが改善。迅速な顧客対応が可能。
- どのように導入ツールを選定されたのですか。
秋田県DX推進ポータルサイトAKITA DeXの「シーズ・ニーズマッチング」を活用し、県内ICT企業等から情報を収集しました。課題を登録するとすぐに複数社から連絡があり、弊社を訪問されてニーズの確認やツールの提案をいただきました。複数社から提案をいただいたことでツールを比較することができ、弊社にフィットしたものを選定できたと思います。社内にはデジタル技術に精通している人材がいなかったので、有用な助言をもらうことができました。
シーズ・ニーズマッチング機能・・・デジタル技術の活用に関わる、解決したい課題や求める情報をサイトに登録すると、県内ICT関連企業から提案をもらうことができる機能。
- 導入に当たって工夫された点は何ですか。
現場のスタッフを最初から巻き込み、ベンダー企業とコミュニケーションを重ねたことです。まず、システムの選定の段階から、実際に使用する事務スタッフにミーティングへ参加してもらいました。ミーティング内では、現場担当にしか分からない細かな業務やそれに対応するシステム改善意見等が活発に交わされました。
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小さな改善の積み重ねが、将来の競争力を創る
- 今後はどのような展開を予定していますか。
今後は、顧客・営業管理システムと会計・販売ソフトを密接に連携させ、製造から営業、経理に至るまで、各部門に分散していたデータを統合し、リアルタイムで共有できる体制を構築したいと考えています。これにより、業務効率化とともに、蓄積された購買履歴や頻度などのデータを分析し、精度の高い販売戦略を展開することで、顧客満足度のさらなる向上と企業価値の最大化を目指します。
また、現在進めている新工場において、稲庭うどん製造業では初となる国際的な衛生認証「ISO22000」の取得を目指しています。食の安心・安全をグローバルな基準で証明し、海外市場でのさらなる飛躍を目指す「食のリーディングカンパニー」としての経営基盤を固めていきたいと考えています。
- デジタル技術の活用を検討しているほかの事業者様へ、メッセージをお願いします。
デジタル技術やDXの活用は、「便利そうだから導入すれば終わり」というものではなく、実際には業務そのものの見直しとセットで進めていく必要があると考えています。現場との調整や、これまでのやり方を変えることへの抵抗感など、乗り越えるべき壁も多くあります。
デジタル化は、単に業務のロスが減るだけでなく、現場が本当に動きやすくなる大きなチャンスでもあります。こうした小さな改善の積み重ねが、将来の競争力に直結します 。また、業務を効率化しておくことは、次世代へのスムーズなバトンタッチや、若い世代が能力を発揮しやすい環境作りにもつながります。ぜひ前向きに取り組んでみてください。
